リラクセーションプログラムの試作

Aさんは、ポイントを整理して、ある勉強会を企画することを考えました。

通称「リラックスの会」として、参加した職員にリラックス感が残る勉強会を考えたのでした。

企画にあたっては、これまで考えたことから、幾つもの工夫を凝らしました。

医療従事者向けの会を開催する上での工夫として・・・

  1. 病院には、多くの部署があるので、部署単位、またはそれ以下の人数でも開催
  2. 義務ではなく、あくまで自由参加であり、申込み性とする
  3. 時間や場所は、極力申し込んだ人の希望に合うものとすること
  4. 会の内容は、15分、30分、60分、90などの複数バージョンを準備

医療従事者の職場環境上の特性を考慮したリラクセーションプログラム

ゾロゾロこのように、とにかく、職員が新しい負担が増えるというプレッシャーを受けないような配慮に全力を傾けたのです。医療従事者を取り囲む職場環境を全く無視した形の計画では、ストレス対策が逆にストレスをもたらしてしまう可能性に留意したのです。

業務の合間に、1時間の時間を作ることは困難でも、30分単位であれば、参加したいという人もいるかもしれません。全職員一斉にという形では実現できなかったことも、この形式であれば、かなりの柔軟性を持って参加してもらえるのではないかと考えました。

Aさんは、早速、各部署に貼り紙をお願いして、興味のありそうな人へ情報が届くようにしました。連絡方法には院内のメールや、直接予約、電話があり、職員の都合で連絡でしてもらうようにしたのです。

リラクセーションプログラムの内容

さて、会のプログラムですが、何パターンもの実施方法を準備しました。主に漸進的筋弛緩法を用いたリラクセーションになりますが、講義を入れる場合と短くする場合など、筋弛緩法の実施時間、モデル提示の時間、筋弛緩法以外のリラクセーション法の提示など、Aさんの中では数十パターンのやり方を想定していました。

広報では、主に椅子に座って行う場合、床に横になって行う場合、立ったままの姿勢で行う場合の3パターンとしました。内容によって、時間を調整できるため、30分からの開催が可能なのです。

  • 横になって行うプログラム
横になってのプログラムでは、通常やや広いスペースを必要とします。その場合、広い会議室が適切なのですが、毎回会議室を押さえることは難しく、会場の確保だけでも多くの労力を必要としてしまいます。そこで、柔らかめの床であれば、即席でシーツやシート類を用いて、簡易の会場を作ることにしました。また、どうしても硬い床しか確保できない場合には、移動式のマットを持ち込むことで、場所を選ばずに勉強会を開催することが可能となりました。横になってのプログラムは、手や足、顔を順番に弛めて行くオーソドックスなプログラムで、リラックス感も得られやすいものとなりました。
  • 椅子で行う内容
会議室タイプまた、何かの会議の一コマで、リラクセーションを紹介して欲しいという要望が挙がることもあり、その場合は、椅子、または立ったままできるリラクセーションのプログラムを用いることにしました。会議の中に勉強会が組み込まれることはよくあることで、その場合、わざわざ会場を作り直す時間はありません。すぐに内容に入れるように、椅子、立ったままの姿勢を中心にしたプログラムを準備しました。この場合、所要時間は15分が限度です。椅子の場合でも、基本的にリラクセーションを行う部位は同じです。
  • 混合
時間が十分にあり、いろいろな方法を紹介することが可能な場合には、椅子や立位、横になった形などの方法を混合でプログラム化しました。また、講義方法にも工夫を加え、ワークショップ形式にする場合と、単にこ講義を行う場合とで分けました。プロジェクタで資料を映し出す方式にも対応し、また、A3用紙を両面印刷した資料でも対応できるようにしました。もしもの場合は、紙の資料を用いずに行えるようにも準備したのです。ここまで準備をするとある程度のアドリブも可能になっていきました。

ポイント

この企画のポイントは、会を大げさにせず、こじんまりと実施できる点に特徴があります。もちろん大規模に行うことも可能ですが、多くの場合数名単位の開催が多いものです。その場合、大人数向けを前提にしてしまうと、開催自体に労力を費やしてしまい、また得ることも少ないという結果すらあり得ると考えたのでした。

Aさん自身は何度もこのプログラムを準備したり、実施する必要がありますが、その点についてもこじんまりした計画のためそれほどの負担にはならないのです。プログラムは使いまわしで何度も使用できますし、会場準備にも10分程度の時間しかかからないのです。

★リラクセーションとは

緊張を弛める方法の一つには、リラクセーション法の活用が挙げられます。

我々は日常生活の中でも、自然とリラクセーションを取り入れているものですが、臨床心理学の方面からも、専門的な方法が確立されています。

  • 漸進的筋弛緩法

エドモンド・ジェイコブソンによって考案された方法です。長い歴史があり、現在でも心療内科等の領域で活用されています。非常に導入しやすい方法でもあり、教育現場や産業関係でもよく用いられています。

ドイツのシュルツによって考案された方法です。漸進的筋弛緩法と同様に、心療内科などで用いられています。体を大きく動かすような方法ではなく、手や足の重温感などの練習からはじめる方法です。

日本で成瀬悟策によって、考案された方法です。元々は動作改善の方法として始まりましたが、その領域は拡大し続けています。スポーツ動作法という分野も登場しています。

これらは単にリラクセーションということには留まりませんが、リラクセーションにも大いに活用できる方法です。

◇ある心理士の取り組み

この物語風記事は数話に分けて書かれています。

  1. 副院長から心理士への要請
  2. 厚生労働省が重要視している4つのケアを参考にする
  3. 委員会に追われる同僚たちの様子
  4. 新たな負担を生み出さない。極力シンプルなプラン
  5. リラクセーションプログラムの試作
  6. 振り返りシートの実施
  7. 集計のまとめ
  8. 自発的な定期開催へ