心理面接におけるリソース

資源

最終更新日 2025年7月6日

面接において、「リソース」という言葉が使われることがあります。日本語にすれば、資源となります。

時にカウンセラーはアドバイスを行う行わないで、議論になる事がありますが少なくとも問題を解決するのは、カウンセラーの力ではないと感じています。

もちろん、カウンセラーが何もしていないというわけでもありませんが、何かしているとしてもそれは、リソースの活用とでも言えることなのです。

カウンセリングにおいてはリソースの活用が行われている

リソースとはその人が持っている様々な能力、力などのことを指しています。例えば、あるストレスに悩む人に、いつもはどうなさっているかを尋ねると、何らかの対処方法が出てくることがほとんどです。

その対処方法は様々であり、ある人は音楽と答え、ある人は運動と答えるでしょう。

この時、運動は体力を消耗するので、もっと別な方法にした方が良いなどとカウンセラーは考えず、運動が一つのリソースになっていると捉えるものです。

その人が待っているリソースがどのようなものであるかを明確にするだけでも意味があるものです。

このことからも、カウンセリングは、カウンセラーが何かを与えるというよりも、その人の強みや持ち味を活用するものであることが一つの特徴と言えると思います。

最もリソースを強調した臨床家は、ミルトン・エリクソンではないかと思いますが、やはりカウンセリングを勉強するとリソースの重要性に気づかされます。

あらゆるところにそれはある

このようにリソースと聞いた時に、多くの人は、体力、趣味、明るさ、前向きさなどをイメージすることが多いと思います。

逆に、不安、出不精、控えめ、などのことは、リソースとしてイメージする人は少ないようです。

しかしながら、果たして本当にそうでしょうか。カウンセリングの考え方・態度からしても、この点には疑問を感じます。

社会は、どうしても前向きで、標準的、平均的な方向を肯定する傾向があります。

本人すら、不安や出不精をネガティブなことと考えているのだと思います。

しかし、そこにはやはりそれらが存在している何らかの意義があり、むしろそれらが何かを支えている可能性も考えられます。

リソースを探すとは、本格的に取り組むとこのような点まで意識が及びます。

カウンセリングの場合では、CLとカウンセラーが紡ぎだす物語の中に、リソースが生まれ出て(すでにそこにあったもの)くるという感覚のほうが強いように思います。

つまり、一方的に活用しているのではありません。

貴方が持っている物はなんですか

また、こんな質問でワークを構成することもあります。

カウンセリング内で行うことも可能かもしれませんが、集団の研修場面などでも取り入れやすい質問です。

内的資源に限らず、様々な持っている物を出すところから意識を向けても良いのかもしれません。

このようなワークを通して、何もないと思っていたような場合にでも、幾つかの自分自身の強みに意識が向くこともあります。

これは自信ともつながる話です。

金子みすゞの作品に触れていると、それぞれの存在が持っているものにスポットをあてていると感じられるものがあります。

例えば、私と小鳥と鈴となどがそうでしょう。

どっちが優れている?という比較から解放されようでもあります。

また、余談ですがこのような発想は就職活動にも応用できる部分があるのではないでしょうか。

よく自分の強みを面接で聞かれるそうですので。

仮に幾つもの不採用経験をもつ場合でさえ、タフであることに通じるかもしれません。

不思議な発想ですが、綺麗な顔をしたボクサーはほとんどヒットされたことがないためです。

同時にそれは、もし顔にヒットできれば打たれ弱いかもしれないのです。

物は捉えようであるというのはこういうことなのでしょう。

発想の転換も起きることがある

リフレーミングの項で触れておりますが、リソースに意識を向けだすと、発想の転換が生じることもあります。

それは、それまで役立たないものとか、価値のないと判断されていたものが、実は裏を返せば大いに大活躍していたと認識する場合等がそれにあたります。

「細かい人」と言われてしまうと、否定された気分になるのは私だけでしょうか。

国民的人気刑事ドラマの相棒でも、毎回のように杉下右京の細かさが描写されています。

続けて、「細かい所がどうしても気になってしまうのが僕の悪いところ」などとまんざらでもない笑みを浮かべながら話を進めるものです。

そして、その視点は鋭く、誰も気づかない視点なのです。

これは紛れもなく杉下さんの持つリソースでしょう。

誰も解決できないような事件を解き明かしてしまうのです。

まとめ

臨床心理士がカウンセリングの成否を握っているかというと、そうではありません。

「カウンセリングが成功した」、という場合、それはCL側のリソースに寄る所が大きいのです。

間違っても、カウンセラーが成し遂げたなどとは考えない事です。

だからといって、カウンセラーはその時間責任をもって向き合う態度が必要な事は言うまでもありませんが。