専業主婦が覚える罪悪感

苦悩する主婦

最終更新日 2025年1月13日

専業主婦が行っていることを、時給に換算したら・・・などという報道を時々目にします。また逆に「主婦は働いていないので気楽でいい」などというセリフも時に耳にします。主婦が担っている事柄は、相当に大変なことばかりであると思いますが、やはり働いていないことは、気持ちの上で重くのしかかるものなのでしょうか。

どうやら、多くの罪悪感を抱きながら、生活を送っている面もあるのだと思います。

世間からのプレッシャーと主婦の罪悪感

主婦の方が休んでいたりすると、どういうわけかプレッシャーをかけてくる人もいます。それは家族であったり親戚であったり友人であったりするわけですが、世間というプレッシャーも存在するでしょう。テレビでニュースを見ていても、あまり触れたくないような内容も出てくると思います。

子供も保育園へ行って時間ができたのだから、働いたり、もっと何か活動をすべきであると、そんな風に言われているような気持になる時もあり得ると思います。ここに罪悪感の生まれやすい環境があるのではと感じます。

それは誰かに指摘されたという体験をもたずとも、なんだか自分自身の中で気持ちがざわざわしてくるようなことで、このような場合、時間はあってもどこか落ち着かない感じが続くものではと想像します。

言わば、これらが世間に対する罪悪感のようなものでしょうか。世間から急かされているように感じることが結構あるものです。生活に必要な収入が確保されていたとしても、関係なく湧き上がる気持ちだと思います。

余談ですが、実際に世間からのプレシャーは以前より強化されているような印象を受けます。これも、高齢化問題と結びつきがあるようです。女性の社会進出などと謳う背景には、労働人国の確保という意図も見え隠れします。

主婦の仕事とは

複数家庭のはざま

家族や家庭ということを考えた時、夫婦で築く家庭と、夫の実家の家族、自分の実家の家族の3つが挙げられるように思います。そして、将来的に自分の子供が築く家庭もいれれば同時に4つ以上の家庭を行き来することになる可能性があります。

この狭間に立っている主婦の方も多い事でしょう。

結婚後も、一般的には両親や兄弟との付き合いは続くものでしょう。正月や連休などの際には、夫婦で顔を出すなどということもよくありそうです。

距離が遠かったりすれば、難しい面も出てくるでしょう。

子供ができた場合、自分の実家よりになるのか、夫の実家よりになるのか、それは物理的距離も関係しているようにも感じられます。また、個々の家庭にそれぞれの事情というものもあるでしょう。

また、心理的な観点から考えると、結婚しきるまでに、少々の時間が必要ということもあるのではないでしょうか。法律上の結婚ということと、実際的な結婚では、若干の時差があるようにも感じます。

夫の実家

自分の実家と、もう一つの家族である、夫の実家があります。この関係がどのように展開するか、これも、個々の家庭によってその在り方は様々です。

同居している世帯もあれば、顔を合わせるのは1年に一回だけという場合もあるでしょう。距離が遠く、新幹線や飛行機を使わなければ、実際的に会えないという場合もあるでしょう。

夫婦で築いた家庭

結婚後に、新たな夫婦としてスタートするわけですが、その中には、ライフイベントとも言える、家族に訪れる大きなイベントがあるように思います。

もちろん、夫婦の出来事として出産などがありますが、どちらかの実家の方で、何かが起きるということも、長い時間の中では起こってきて当然ということになります。

それは、誰かの病気や事故であったり、引っ越し、退職、金婚式、など多くのことが考えられます。別々な家族とはいえども、それぞれの実家ですから、お見舞いに行ったり、お祝いをしたりということもあります。

非常にインパクトが大きい場合は、実家に頻繁に戻る必要が出てくるなどのイベントもあるでしょう。

訪れる危機

夫婦特有のイベントという枠を越えて、お互いの実家にイベントが生じた場合にも、そのインパクトは夫婦に訪れます。例えば、誰かの入院などが起こり得ます。

このような場合、両親のもとへ駆けつけたいが、夫の食事をどうしようとか、子供がいれば、夫に任せてよいのか、また夫が仕事中どうしたら良いのか・・・と迷いがつきない状況が予想されます。

距離が近ければ小回りもきかせられると思いますが、遠ければ、本当に大がかりなことになるでしょう。

そして、自分の実家のことに力を注いでいる中で、夫の実家に何かが起きたりすることも、不思議なことのようで、起こり得るようです。

大きなイベント一つが起きても、かなりのインパクトをもたらし、それが重なるとなると、息切れを起こしてしまうのではないかと心配になりそうです。

どうやってこうした、いわば夫婦や家族の危機を乗り越えていけるかというところに、その後の夫婦関係の進展や深まりが見え隠れしているようにも感じます。

子供の結婚を機にできる家族もある

さて、番外編で触れておきたい家庭があります。

それは、自分の子供の結婚後にできる家庭です。

どこかで触れたことがありますが、結婚したからと言って、あるいは就職したからといっても子育てが完全に終了するものではないようです。

結婚した子供から孫の世話を頼まれたり、お金を貸してくれなどともちかけられることもあるでしょう。

そう考えると、3つの家庭どころではない苦労が主婦の方にのしかかる可能性があるということになります。

主婦の買い物

これだけ忙しい主婦なのですが、罪悪感を覚えることがあるようです。

買い物と言えば、我々が日常的に何気なく行っていることに他なりません。ですが、この買い物に罪悪感が関係してくる場合もあるようです。

町を歩けば、色々な物が売られており、時には新しいものに目をひかれることもあります。仕事の帰り道にコンビニによって何かを買って帰る人も少なくはないはずです。

また、流行りの本など見かければ、本当に読むかどうかもわからないままに買ってしまうこともあるのではないでしょうか。つまり、我々はいわゆる無駄遣いを結構頻繁に行っていると思います。

少しの無駄使いにも潜む罪悪感

これ買っていいのかしら

しかし、主婦が感じる罪悪感の中には、こうしたちょっとした買い物も対象になることがあるのではないかと想像します。

自分で働いて収入を得たわけではないのだから、無駄遣いをしてはいけないとか、自分の興味にお金を使ってはいけないというプレッシャーを少なからず持っている人もいると思います。

また、例えば自分が使うシャンプーのように必要なものであっても、なるべく安い物を選ぶようにして、自分が使う物にかかる費用を抑えようとする意識が働く場合さえあるでしょう。主婦はお金を自由に使ってはいけないのでしょうか。

主婦の噂話

Dさんは、3年ほど前に、結婚し、旦那さんと暮らし始めました。

結婚を境に、仕事は退職し、専業主婦となったのです。旦那さんは、多忙で、
休みの日も出勤が入ることも稀ではありませんでした。

子供もまだいないため、Dさんは、専業主婦として時間を使っていたのですが、

ある日、ご近所の話に混ざると、あちこちの奥さんの話が飛び交ってい近所の奥さん

近所の奥さん:「いいわよね、あそこの家の奥さん。旦那さんがずいぶん稼いでるみたいで、平日から一人で外食に行ったりしてるらしいわよ。とてもあんなお店いけないわよねー。」

近所の奥さんB:『あっちの奥さんなんて、毎週どこかに出かけるそうですよ。旦那さんが仕事を休めないときは置いていっちゃうんですって』「まぁ・・・」

近所の奥さん:「遊ぶお金が必要なら、少し位パートでも出るべきよね。私なんて、子供を育てながら、実家にも顔を出して、それから夫実家へも行って、それでももう10年も休んだことないわよ」

こんな話が飛び交っていたのです。Dさんとは事情が違いますが、専業主婦として、何か、他人事とは思えないような話でした。

Dさんは、自分も噂されてるのではないかと心配になってしまったのです。

確かに、時間は結構余裕があるには違いないのですが・・・

お茶をゆっくり飲んではいけない?

Dさんには、家事の合間にお茶を飲んで一息入れる習慣がありました。

その際に飲むお茶は、毎回緑茶のように同じものではなく、紅茶やルイボスティーなど、いろいろなお茶を飲んでいたのです。

これが一つの楽しみにもなっており、買い物帰りには紅茶やハーブティーなどを見て回ることもありました。

ある日も、いつものようにお茶を淹れようとお湯を沸かし、ティーカップを温めていたときのことです。

Dさんは、先日の近所の人たちの会話を思い出しました。

「よく考えれば、この紅茶一杯で幾らになるんだろうか・・・。外で飲むよりは安く済むけど、毎回違う種類のお茶を飲むなんて贅沢かしら・・・。一種類に絞れば、もっと安くすむわよね・・・」

などと、お茶を淹れようとするDさんの頭を、そんなことばかりが過るのでした。

「だいたい、こんなにお茶で休憩ばっかりしていていいのかしら。パートに出ていたら、きっとお茶をゆっくり飲む時間なんてないはずだわ。私ってやっぱり甘えた主婦なのかしら。」

Dさんは、なんだか自分が恥ずかしような気持ちと罪悪感がこみ上げて一人泣いてしまうのでした。

もし時間を15分刻みで考えたなら、旦那さんが出勤してからの時間をやりくりすれば、少なくとも5時間程度は、空き時間があったのでした。

それなのに働いていないとはどういうことなのかを、Dさんは自分自身でもこの現実を収めきれずにいたのです。

しかし、全ての専業主婦がパートに出ているわけではありません。そもそも専業主婦という言葉があるくらいです。

Dさんは今のままでいいのかと、今晩旦那さんに相談してみることに決めたようです。

Dさんは、パートに出なければいけないのでしょうか。

活動的でなければいけない

主婦には時間があるのだから、空いた時間は活動的で、有意義に過ごさなければいけない、とのプレッシャーを感じる人もあると思います。

しかし、それぞれには個性があり、誰しもが活発に動くことに充実感を見出すわけではありません。結婚前は読書が好きで、休みの日はいつも読書をして過ごしていた人もいるわけです。

主婦になったからといって、何かのサークルに所属して活動しなければならないわけではありませんが、ここにも、何か活動的な方が良いという世間のプレッャーの存在をなんとなく感じます。

ご自分の希望

色々な罪悪感に触れてきましたが、こうした罪悪感を抱えている際に、可能ならば世間はそのように言うかもしれないけれど、ご自分ではどんな風にお過ごしになりたいかをお伺いしてみたいところです。

実際、このようなプレッシャーに駆られて、町内会の役割を引き受けたり、働きに出始める人もいるのではないでしょうか。

しかし、せっかくできた時間なのだから、ご自分ではどんな風にお過ごしになられたいのかも聞いてみたいと感じます。

(確かに、自由にお金を堂々と使いたいという気持ちから働きに出る人も多いように感じられます。忙しい中働きに出るのは大変だけれど、気兼ねなく使えるという点は大きいのだと思います。)

どう生きたいか・在りたいか

こうした探求は、その後の生き方とも関係してくるように感じます。

もし子育てということに大きな価値を見出していた方は、いつか子育ての終わりも来て独立していくわけですから、どこかで自分の生き方を確認しておくことも、その後の人生を豊かにしてくれる可能性があるのではないでしょうか。

ここでいう確認するとは、何かをはじめるということではありません。

因みに、カウンセラーは色々なところに配置されて給料をもらっていますが、あまり仕事のない日もあります。

ですが、その存在は重要だと思っています。ちょうど、火事が毎日起こらなくても、消防士さんにはいてもらわないと安心できないことに近いと思います。

そこに存在することが、実は誰かの安心を支えている可能性があるのです。

こうした話をすることは、そもそもはばかられることかもしれません。その際には話す相手を選ぶことが必要となるのではないでしょうか。

カウンセリングの場は、周囲の意見や目から離れ、自分自身の気持ちを確認していただきたいと願って安全な空間作りを心掛けています。

まとめ

日本社会においては特にと言って良いかと思いますが、世間の目とは本当に気になるものです。

無視したくとも心の中に沸きあがって来る罪悪感があるのかもしれません。

自分の在り方を自分自身が肯定できたら、その罪悪感も少しは薄れて行くのかもしれません。