最終更新日 2023年8月24日
カウンセリングの誤解の一つに、「カウンセリングは指導である」ということを挙げてよいと思います。また、たくさん話したり、積極的に意見を述べたりすることがカウンセリングでは望ましいということもまた誤解と言えるでしょう。
日常生活の中には、「評価」ということがどうしてもついてまわります。そうではなく、カウンセリングにおいて最重要といえるほどのキーワードは「安心感」です。
カウンセリングでは安心感が重要
カウンセリングは、「守られた空間」と称されることがあります。つまり、カウンセリングの場で「安心感」を得て頂けたらと願っているのです。
日々、過酷な現実を生きているその人が、カウンセリングの時間だけでも「安心感」を得て頂けるなら、そこには意味を感じます。
そのため、我々カウンセラーは、必死にこの空間の安全性を追求し、守ろうとしています。
もう少し俗っぽい言い方をすれば大事な話を台無しにされないよう、邪魔されないよう安心してお話頂けるよう努めています。
これがカウンセリングの仕事の一つであると考えます。
評価とは無縁な空間
例えば家庭の中でさえ評価は頻繁に行われています。
「お兄ちゃんを見習いなさい」とか、「お父さんみたいになっちゃうわよ」というセリフを聞いたことがあるかと思いますが、わかりやすいところではこれも評価の一種だと考えられます。
また、「お兄ちゃんはよく勉強して偉いね」というセリフも、誉める行為ではありますが、それでは勉強しない弟はどうなるのだろう、ということを考えるとやはり評価の影が付きまといます。
これは、日常に在りそうなことを例として用いただけであり、こういうことが悪いと述べているわけではなく、当然評価や競争の中でたくましく育っていくという面も大きいわけです。
ですが、日常は評価であふれかえっていると想像できます。
評価をしない世界が正しいということではなく、「評価から離れた時間が存在する」ということに意義があるのだと思います。そこでどのような体験をするかという点がカウンセリングにおける一つの醍醐味となるでしょう。
カウンセリングの時間にも評価が付きまとったら、正しい回答を模索してしまう
もしカウンセリングにも評価が付きまとうなら、CLは正しい反応を模索し始めることになります。
ちょうど、就職の際に行われる面接のような感じです。
果たして、出されたお茶は飲むべきか?飲んだら減点されるのではないか・・・などと疑心暗鬼になっていると聞きます。これでは、ずっと評価されていると感じられて安心感とは程遠い時間になります。
同様に、カウンセラーが喜びそうな回答ばかりするはめになるカウンセリングなど、まるで安心できません。
安心感が起点となり何かが展開することも多い
評価から離れ、価値観からの離脱が起きたとき案外素朴な語りから、その人の興味関心や、進路、やってみたいことなどが浮かび上がってくることもあるでしょう。
これは一定方向の評価ではなく、あらゆる方向に開かれた場であることがもたらす安心感の賜物といえるでしょうか。
不思議な事に、普段は言葉にならずにいたことがカウンセリングの場においては徐々に言葉になってくることもあります。それは何も考えがなかったわけではないことも意味しているとも言えるでしょう。
会議で発言がない人は、考えがないのではなく、安心して発言できる状況ではないから発言していないだけということになります。むしろよく危険を察知して状況を把握していたのです。
安心感が蓄積されるだけでも、新たな行動につながる場合もあります。
この会議では自由に意見を出してくださいと言った課長だったが・・・
余談ですが、ブレインストーミングというやり方が実業界で取り入れられています。訳せば「脳の嵐」です。つまり、やたらめったらに意見を出していくやり方なのですが、現実にはそうはなりません。自由に意見を出していると、だいたい、上司が怒り出す結末があるのです。
これではブレインストーミングになりません。安心感を奪われた単なる会議と化してしまうのです。そのため意見はちょろちょろといつも通りの無難なものになります。
まとめ
カウンセリングにおいては、特にこの安心感を大事に考えています。
このような話は大事なお話ですので、時間をしっかりきめてプライバシーの守られる空間でお話いただくわけです。これもまた、安心を深め守ろうとする工夫の一つなのです。