最終更新日 2024年12月21日
心理面接とは何をする場なのか問われたときの回答の一つに「自己理解促進の場」と答えたとしても間違いではないでしょう。
あくまで、一つのという前提がありますが、自己理解が促進されることは時に経験されるものです。
安全にということがどこまでも大事なポイントになりますが、面接の時間では自分自身に意識が向きやすくなることがあります。
カウンセリングで自己理解を深めるとは
多くの場合、「自分の悪い所を探す」と捉えられている模様ですが、そうではありません。何度も述べてきているように、カウンセリングの場は、何かを糾弾したり、説教する場でもありません。その人を尊重する場なのです。
その線からしても、悪い所を探して、ましてや改めさせるなどというのは、尊重とは真逆の話になります。
意識された自分の事は大事にしていただいている
その形状をとっていることには何かの意味がある可能性もあります。
自己理解を深めていくと、「原因」というよりは「意味」の方が浮上することがあります。
「いつも気を張っている自分」に意識が向きそれを認識した人は、それをどう捉えるでしょう。
原因モードで捉えると、「成績を上げないと怒られた子供の頃の体験のためだ」というモードが一つです。
一方、意味が浮上すると、「いつも全力でやろうとしていたんだ!」という自分自身の在り方とつながるかもしれません。
自己理解後の変容
すると、その先は選択制になります。全力でやろうとするときもあれば、いつもでなくとも良いとする意識が生れて選択的になっていけるのではないでしょうか。
気を抜いてしまったらいけないこともあるのですから、より合理的な体勢になったと言えます。
客体化することがある
多くの場合、心理面接は言葉によるやり取りが主たる方法になります。言葉を交わすことによって何が起きるというのでしょうか。
まず、心理カウンセリングは何かを教えようとしたり、考えを変えるように強く主張することとは基本的に異なります。お話を伺っていて、それならこうした方がいいのではないか?とカウンセラー側が感じたとしても、それを押し付けようとする態度はそこにはないわけです。
話を進めるために、カウンセラーの感じたことや考えを伝えることはあっても、そのようにするべきであると説得しているわけではありません。
学校や職場では何か新しいことを学ぶ際に、先輩や上司、先生などから指導を受けることがあるでしょう。それは知識であったり、技術であったり、心構えであったりします。一応それは指導する側の中に準備された内容が多くの場合はあるはずで、それを伝えようとしているわけです。
カウンセリングでは、予め準備されたことはないのです。もしこれを準備しようとしたら非常に限られた内容になるでしょう。
カウンセラーは聞いているだけである。というご感想をいただくことはよくあります。実は、この中にカウンセリングの特徴が含まれているともいえます。
カウンセラーはうなづいたりしている
上述したように、カウンセラー側の主張ばかりを押し通すという態度はなく、自由な語りを展開していただけるような時間になるよう努めているわけですが、カウンセラーは、うなずいたり、要約したり、時々質問を挟んだりしています。
こうして、どんなことをお感じになっているかなど、その人の体験が明確になっていくのです。
こうしたやり取りがカウンセリングの一部になるわけですが、カウンセラー側の理解が進むとともに、クライエント側にも、自分自身の体験への気づきが生じてきます。
それは、「怒っていたのだ」とか「焦っていたのだ」など自分自身の体験に対する気づきと言えるでしょう。
このような時、カウンセラーは、クライエントの体験を映し出す存在としてそこにいたとも言えるわけです。
こうして、客体化された自分自身の体験を振り返り、何かのひっかかりが明確になったり、もやもやしていたことが明らかになったりするわけです。
この客体化もカウンセリングの中で行っている仕事と捉えてよいのではないでしょうか。結果的に客体化が起きるという表現の方が適しているかもしれません。
こうしたことの連続の中に、クライエント自身の進みたい方向が現れてくることもあるでしょう。
反省などしない自己理解が理想
反省などという方向になるべく意識が向かわない形で、自己理解が促進されることが理想ではないかと考えております。
先にも述べていたように、ここにもカウンセリングにおける安心感の重要性が垣間見えます。
安心・安全な雰囲気の中で行われる対話でなければ、自分に意識を向けるなどという行為は成立そのものが困難でもあり、行ったとしても様々な不純物が混入する結果になります。
どんな風に進めるのか
基本的には対話が用いられます。例えば、カウンセラーから、「その時ご自分ではいかがだったでしょう?」などと質問するわけです。
カウンセラーによっては、なんらかの心理テストを活用しながら進めることもあるでしょう。この辺りはカウンセラーのスタイルによります。
心理テストを使った場合でも、それはあくまで結果であり、カウンセラー側には、「ご自分では、どうです?」という態度が必要だです。
まとめ
基本的に、安心感が漂うカウンセリングでなければ、自己理解の促進は困難であり、危険ではないかと考えています。
また、自己理解を進めるペースや、深さも人それぞれであり、カウンセラーが勝手に押し進めるような態度があってはいけないとも考えております。
自分を振り返るとか、客観視するとか様々な言い方がありますが、これはたやすい事ではないと思います。
どこか怖いですし、見たくもない事も多いものです。
そのような作業をする際には、絶対的な安心感ある雰囲気の中で行われたいものです。