最終更新日 2024年10月10日
伊東博という先生は、カウンセリングに関する著作を残しています。友田不二男氏と共に、日本のカウンセリングにおける草分け的存在です。
伊東博先生の著書はまさに何度も読み返す本
カウンセリングそのものがタイトルの本です。
この本を心理学科などに入学してすぐに読み始めたという人は今日では少ないでしょう。
多くの場合、心理学を学び始めた人が手にする本は、大学の講義で使われる、心理学概論のようなテキストとなることでしょう。心理学を学び始めたからといっても、すぐにカウンセリングのことに話が及ぶかというと、そうでないことが多いようです。
さて、この本ですが、初版は1959年のことになるそうです。当時は、タイトルも少し異なり「カウンセリング入門」だったようです。
つまり、日本にカール・ロジャースのカウンセリングが紹介されて間もないころに出版されたことになります。近年、本当に多くのカウンセリング関連の本が出版されていますが、日本におけるカウンセリングの根本的な所に立ち返ってということであれば、この本に書いてあることはまさにそのことであると思います。
カウンセリングは純度が保たれることに意義を感じますが、それでも時にブレてしまうことがあるものです。そのような時に、カウンセリングとはそもそも何か、ということに立ち戻れる書物でもあります。
カウンセリングの本は、何度も読み返す中で、その時々に異なる感触を覚えることがあると、以前書いたように思います。
伊東先生の本は、まさにその性質をもっている本だと思っています。(読み手側の事情にもよるのかもしれませんが)
伊東先生の経歴などはこのサイトで確認できました。
参考サイト:人現会
カウンセラーの熟練度によっても捉え方が変わって来る
初心者の頃は、くまなく隅々まで読み込もうとしていましたが、時間をかけたわりには、なかなか体に馴染むようにはいたらなかったものです。
数年の経験の中で段々と本の中に書かれていることが腑に落ちてきたようなもので、長い付き合いになったものです。
また、先ほど若干触れていますが、自分自身の臨床スタイルがわからなくなってしまったとき、もう一度この原点に立ち戻ることは、バレリーナが練習の度につま先に意識を集中する位の意味合いを持っていると思います。
どうしても日々の中で我々はたくさんの刺激を受けながら暮らしているため、自分自身がぶれたりぐらつくことが起きるものです。
ぐらつかないように努めることも大事ですが、ぐらついてしまった場合のメンテナンス方法を知っておくこともまた同じ位に大事だと思います。
そんなメンテナンス作業にもこの本は活用されると思います。
- 関連ページ:日本におけるカウンセリングの歴史もご参照下さい。
後書き
カウンセリングを10数年行ってきましたが、それでもこの本に時々立ち戻ります。
上述したように、以前とは別な読み心地を得ることがあるのです。