ブログ著者:臨床心理士 松田卓也

最終更新日:2025年10月19日

教職員のストレスとは

もういっぱいいっぱい

今回は教職員のストレスに注目しました。

教職員の休職状況が発表されています。

予てより、教職員の労働状況は度々テレビやネットの報道にも取り上げられていました。

教職員のストレスについて

いつもニコニコ

いつもニコニコしていた先生を何人も覚えていますが、あの笑顔の背景にはたくさんのことを背負っていたのでしょうか。

それとも、年々の忙しさの中で、段々とニコニコしていた先生も減っていってしまったのでしょうか。

学校は社会の縮図よ言われることがあります。現代社会の背景事情を考えると、様々な問題が学校に表出されていると想像されます。

学校は社会の縮図

人手不足も深刻

少子高齢化を背景に、団塊の世代が一斉退職すると教職員の世界でも人手不足がやはり深刻化しています。

  • 参考資料:令和4年度学校教員統計中間報告(学校教員統計調査の結果中間報告)を公表します。

どのくらい不足しているのか、一つには3112名程の未配置があるというデータがでています。

参考サイト:TBS NEWS DIG Powered by JNNより

この報道によると、全日本教職員組合などの発表をまとめ、深刻な教員不足の現状を述べています。

こちらでも教職員のメンタルヘルスについて言及されています。

子供にまつわる法律や保護者、捉え方など様々な変化があった

勉強しなおす

学校は社会の縮図というならば、社会がこれほどまでに流動している中、学校はその反動を直接的に受けているのではないでしょうか。

例えば、「国際化」などと謳い始めたためか小学校で英語を教えるようになりました。

一体どんな風な授業が行われているのか想像もつきませんが、どなたかの先生は英語を必死で勉強し直したのではないでしょうか。

その他、プログラミングもはじまったと聞きますし、コロナに関連してオンライン授業なるものまで急速で導入されました。いつか黒板も使わなくなるのでしょうか。

なにより各種コンプライアンス遵守は教育の世界を一変させた可能性があります。

聖域なき働き方改革?

放課後

日本全体として働き方改革が促進されていることは確かですが、教職員の世界では、何度も報道にもなるように、それとは逆行する話を度々耳にします。

データには現れない残業などは山のようにあるのでしょう。

部活顧問の問題は記憶に新しい所です。

残業は概ね、良い方には向かないというデータが示されております。(全部画一的に考えられる事ではないとは思いますが。)

昔いつもイライラしていた先生もたくさんいましたが、もしかして残業に圧迫されていたのでしょうか?

部活改革が起きている

報道に取り上げられるようになりましたが、部活顧問の負担を降らそうとする動きが起きています。

外部指導者の協力を得て、実際に学校に来て部活の指導をしてもらうものです。

このような取り組みにより、下記の動画では90時間以上の残業をしていた先生が45時間程度まで減った様子が映されています。

さらに、神戸市においては、2026年8月に部活動が終了します。9月からはコベカツなる名称で別な形になります。

中学校の全国大会もすでに廃止が決まった種目もあるそうです。

こちらの会見で、部活動について述べられています。

教育の複雑化

社会の変動を顧みただけでも、教育は年々複雑化しているはずです。

先に挙げたように小学校でも英語が教えられるようになりました。

授業の上手い先生の動画を作成してしまえばいいという意見があると承知しています。

これはどう捉えたなら良いのでしょう。補助的に用いると言う事であれば了解できるかもしれませんが、全てがそうなってしまったら教員の仕事から授業が消えることになります。

その他の事をする者が教員という新たな定義が生まれるのでしょうか。

個人的には、偶然でも誰に教わったかが人生を左右する位の衝撃だったように思うのですが・・・それが一律化されると言う事になります。

保護者の存在感

三者面談

予てよりPTAは存在感をもっていましたが、以前よりも保護者との連絡頻度は増えていると想像しています。これは各種通信技術の変化も一つの要因であるとは思いますが、もっと広範な事情が想像されます。

存在感はありつつも、共働世帯が増加したことはさらに学校への負担を求められてしまうということなのかもしれません。

逆に、学校にかかわることができない保護者も増えているのでしょう。

色々な人が学校に関わるようになった

校舎

いい面だけを見ようとすれば、多くの人や専門職が学校に関わることは望ましい事と言えるかもしれません。

一方で、色々な人が出入りするためには準備も必要ですし、間に合わないまま何かが開始され手探り状態が続くことも稀ではありません。

スクールカウンセラー導入に際しても相当の混乱があったはずですし、いまだにそれは続いていると見ています。

1990年代後半頃に民間校長の登用がありました。スクールカウンセラーも同じような時期です。

少子高齢化も大きな背景事情としては影響している

昭和と令和とでは大変多くの事が違います。

これは日本全体の変動から伺えることです。関係ないようで大きく言えば少子高齢化ですが、介護問題が学校とも通じている所があります。

昨今はヤングケアラーなる言葉が聞かれるようになりました。

休職状況

令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査によると、教職員の休職理由は、「精神疾患」で6,539名でした。過去最多となっています。

その後令和5年では、7,119人に増加しています。

この調査結果は、例年12月頃に前年度分が発表されます。

休職は、教員に限らず他の公務員、一般企業においてもその動向が注目されています。

現代社会ではとりわけ、そうしたテーマのカウンセリングが行われるようにもなりました。

公⽴学校教員のメンタルヘルス対策に関する調査研究事業が行われている

文部科学省のWEBページを参照すると、「教職員のメンタルヘルス対策について」掲載されています。

その趣旨は以下の通りです。

引用元:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/mental_00008.html

近年、経済環境が大きく変化し、一般的な社会の状況として仕事においてその量の増加、質の困難化の傾向があり、さらに、啓発活動等によって社会において精神疾患に対する理解が進み、概念が多様化していることなどから、職場におけるメンタルヘルス対策が社会的な課題となっています。

学校現場においても、精神疾患により病気休職を発令された教職員の人数は増加傾向にあり、教職員のメンタルヘルス対策は喫緊の課題です。学校教育は、教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであることから教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるようにすることがきわめて重要です。

また、児童生徒に対する影響だけではなく、教職員自身にとっても、意欲的に職務に取り組み、やりがいを持って教育活動を行うことが重要です。

こうした状況を踏まえ、文部科学省では、教員のメンタルヘルス対策に取り組んでいます。

このような趣旨が述べられています。

平成24年にはすでに「教職員のメンタルヘルス対策会議」が9回実施されており、その報告書もまとめられています。

そして下記のような趣旨で、「教員のメンタルヘルス対策に関する調査研究事業」についてもまとめられています。

文部科学省では、教員の精神疾患による病気休職者が増加していることを踏まえ、令和5年度より、メンタルヘルス対策に関する調査研究を実施しています。 本調査研究では、各教育委員会において、専門家等と協力しながら、病気休職の原因分析や、メンタルヘルス対策及び労働安全衛生体制の活用等に関するモデル事業を実施し、事例の創出や効果的な取組の研究を行っております。

すでに報告書も掲載されています。

スライド61枚の資料になっており、様々なデータや対策が掲載されています。

サマリー

前半部分にサマリが掲載されているため、全体像はすぐに把握できます。

民間企業よりも休職率が高い現状と、さらに上昇していることが述べられています。そして、単に専門家を設置するだけの対策にとどまらない対策が述べられています。

別な資料ページを見れば、民間企業は0.8%であるのに対し、公立学校教員は1.42%であると示されています。(同時に国家公務員は1.92%と示されている点にも注目したい)

もう一つ年代に注目すると、若い人ほど数値が上昇している結果が示されていた。

若い人が多い

長期療養者では突出して20代が高く上昇している。

病気休職者に限ると、30、40代が上昇している。

まとめ

教職員は、子供からすれば確実な存在として映ってきたかもしれません。

そうあるべきという主張が大半ではあると思います。

なにしろ22歳で先生と呼ばれるのですから、そこには猛烈なプレシャーを感じます。

一方、ださいところを見せてくれた先生もたくさんいたように記憶しています。

実は、そこから学んだこともはかり知れないものでした。

完璧を求めてくる社会ではありますが、完璧ではでは務まらないのが教育と言ってしまいたいところです。

きっと、様々な方面からの批判を受けるのでしょう・・・。

その他、仕事の悩み全般に触れたページもあります。