最終更新日 2024年10月3日
1988年に臨床心理士の資格制度がスタートして以来、臨床心理士としての活動は、徐々にその活動の範囲を広げて行きました。
臨床心理士資格とは関係なく、医療や教育の分野で心理援助職が活動していましたが、臨床心理士としての活動は30年程です。
臨床心理士が多く活動する分野の一つには教育の領域が挙げられます。
スクールカウンセラー委託研究事業が開始された年は、1995年の事でした。
これ以降、学校にはスクールカウンセラーとして多くの場合臨床心理士が配置されるようになっていきました。
学校で、臨床心理士という専門職がどのような活動ができ、どのようなことで教職員と協同したり生徒のための力となれるのか、こうした取り組みが開始されたのです。
※政府系サイトの職業情報提供サイトにスクールカウンセラーの紹介がありました。
スクールカウンセラーを受け入れる側も悩んだのでは?
学校に、外から臨床心理学の専門家がやってくるという話になった時、学校側ではどんなことが起きていたのでしょう。
- どこの部屋を使うのか。
- デスクは必要か
- 教育のことをわかっているのか?
- 色々任せていいのかな
- どうせ何もできないでしょう
- 今までの取り組みを否定されるのではないか
- 生徒を甘やかそうとしないだろうか?
などと、学校側には期待もあれば混乱も大きかったと思います。
臨床心理士側もどんな心境だったのでしょう。
スクールカウンセラーに関しては様々な議論も行われてきました。社会的にカウンセラーを各領域に配置する動きが進んでいます。最も代表的な例としては、スクールカウンセラーの配置が挙げられると思います。
1995年から試験導入がはじまり、現在では、カウンセラーの配置が当たり前のようになっています。この動きは、大学や専門学校へも広がったと考えられ、どこの教育機関にもカウンセラーの存在を感じるようになってきました。
新しくカウンセラーを配置するとき
背景には社会的な期待(不登校児童・生徒などへの支援の面で)というものもあったのだと思いますが、カウンセラーが登用されたからといって、問題と考えられていることが一変するわけではありません。
その他、総合病院においてもカウンセラーの配置が進んでいます。もともと、精神科以外の科で活動するカウンセラーは存在しましたが、がん対策基本法が作られてから、カウンセラーが、身体科の中で活動する場面が増えて行ったように感じます。
新しい職種が、もともとある組織の中へ新たに入っていくという際には、様々な期待やイメージを持たれることがほとんどだと思います。精神科医とカウンセラーの専門性の違いという点もなかなか理解が困難な点かも知れません。こうした点は、チームとして協同する中で、徐々にお互いの専門性が理解されていくという、ある種時間が必要なのではないかと感じています。
配置後の構築が重要
ある種の時間が、必要と述べましたが、現場サイドの期待感からすると、直ぐにでも活動を始め、そして納得のゆく結果を出して欲しいという強い希望があると思います。
カウンセラー側としても、その期待に応えられるような態度は必要だと思います。
しかしながら、心理カウンセラーの専門性とは何か?という点を、常に考えておく必要があると思います。
一体、自分自身の専門性がどのような形で、どう役立てることが可能なのか、他の職種が既に行っていることなのか、将来的に他職種が担う事なのか、このような観点を日々持つことが、その現場において、有益な活動をすることに繋がるのではないでしょうか。
専門性を外れた方向へ迷走
カウンセラーにとっても始めての現場では、専門性とは別な方向へ自身の活動が迷走する可能性も秘めていると思います。
目の前で、他の職員が忙しそうにしていたら、それはその組織の一スタッフとして、とにかく手伝うという態度は当然のことだと思います。これは、専門性とは関係なく、仲間として重要な態度であります。このようなことは除くにしても、早く自分の活動を充実させようとし過ぎて、迷走することもあります。
はじめての配置だから、などとばかりも言っていられない現実もあるわけです。
保護者も困惑させている可能性がある
今の40代、50代で中学生くらいのお子さんがいる家庭では、その両親が中学生の頃スクールカウンセラーの存在はごく僅かでした。そのため、一体何をしている人なのか、保護者にとってもわかりにくい存在になっているのではないでしょうか。
時に、スクールカウンセラーと喧嘩した人もあるかもしれません。
カウンセラーがいて当たり前の環境
学校にカウンセラーがいることが当たり前という環境がもたらす影響は、義務教育を終えたあとにもあらわれる面もあると思います。
通常、カウンセラーの存在に出会うことなく、生涯を過ごすということは多いと思います。精神科の病院に定期的に通院している場合でも、カウンセラーには会ったことがないという人さえ少なからずいらっしゃるはずです。
このスクールカウンセラーが、人生の早期に何らかの形で認知されることは彼らが社会に出た際にも、どこかでカウンセラーの存在を意識する可能性が残るということにつながるのではないでしょうか。
認知度が上がるということが、良いことなのかどうか、この点は検討が必要であるとしても、20年前以前の社会と比較すれば、カウンセラーに関する認識はやはり何かが変化していると考える方が自然でしょう。
繰り返しになりますが、その内容の検討はまた別な問題であると思います。個人的には、あんまり出歩きすぎる活動はどうかと思うのです。
その他
大いに期待される事、これは光栄な事であるかもしれませんが、専門家やってくれば全ての問題は任せられるし、問題も解消されていく、と考えたくなるのはわかります。ですが、実際のところはそう単純な事ではないわけです。お互い協力し合い認め合えるような関係が求められるのではないでしょうか。
スクールカウンセラーの設置は喜ばしい事だとしても、やはり学校の中でカウンセリングを受けるという事へのためらいを感じる方も多いと思っています。
もし学校から離れた場でカウンセリングを利用したい場合には、私設開業のカウンセリング機関を選択するのも一つです。