最終更新日 2024年11月19日
カウンセリングは、我々だけが学ぶものではなく、これまで教師などをはじめ、多くの職種から一般人、ボランティアなどが学ぼうとしてきました。
そしてカウンセラーというアイデンティティーで活動する人もいれば、それ以外の職種が自分の活動に役立てようと考え勉強する場合もあるわけです。
特に教育の現場と看護の現場は、カウンセリングと長い歴史を共にしてきたように思います。
他職種が学ぶことは意義深いことであると思います。しかし、カウンセリングを学んでも、カウンセラーになってしまうわけではなく、その方達には、元々の職種と専門性が備わっているのです。この辺の事に関しては、少し考えを深めておく必要があるでしょう。
時に他職種の人がカウンセリングの講習会などに参加すると、現場で起きていることと講習でレクチャーされている事との間にずれを感じるという場合もあるでしょう。このことに関してもよく考える必要があります。
看護師とカウンセリング
看護の現場を例に、他職種がカウンセリングを学ぶことについて述べて行きたいと思います。
まず、看護の現場とはどのような所でしょうか。
現在、多くの場合、入院病棟を経験する看護師が多いわけですが、クリニックに勤める看護師も多数です。
病棟勤務の場合、交代勤務で時間は当番が決まっていたりします。看護師の人出が足りないということが社会的な問題にもなっています。ずいぶん長い事このことは続いているように感じます。
担当する患者数には限りがあるものと考えられますので、看護師自体の人数が少なければ、病棟に受け入れられる患者の人数にも影響するでしょう。そして、基本的に多忙な1日を過ごしています。
また、大きな病院ですと、病棟間での異動などもあり、新しいことに触れる機会が多い職種でもあるでしょう。こうした環境の変化は異動ということに限らず、各種医療機器も日々変化しているということもあります。新しい機器が導入されれば、新たに使い方を整理しなくてはなりません。これらは対人援助職のストレスとしても捉えられることだと思います。
このように忙しい中でも、看護師の方たちは患者のために新しく学ぼうとする姿勢が絶えないように感じます。各種勉強会がある中で、特にカウンセリングを学んでみようとする看護師の方もいるのです。患者さんと接する時間が一番長い職種は看護師と言えると思います。
看護師がカウンセリングを学ぶ意義
はじめに述べておくと、やはり学ぶ意義は深いと考えます。看護という専門性を持った方々が、カウンセリングの視点に目を向けていただけるということは、カウンセラーにとっても感慨深いことであります。
学んだカウンセリングは、通常の病棟業務、緩和ケア、専門外来、看護外来などで何らかの形で生かされているのではないでしょうか。その一つに、カウンセリング独自の視点からの人間理解ということが挙げられるでしょう。
元々の専門性を突き詰める中で、別な視点も大事にするという態度は、その援助職の幅をさらに広げるものとしてくれるのではないでしょうか。しかしながら、看護師がカウンセラーと全て同じようにしなくてはならないということではないと考えています。そんなはずはないのです。
心の中に何かを育む
ワークショップなどで、お互いに組んでワークを行う時、スキルを学んでいると同時に、援助職としての何か大事なことを心の中に育んでいるように思います。
これは、臨床心理学的リラクゼーションの方法をペアで学ぶと色濃い感じがします。
形はリラクゼーションではあっても、そこにはカウンセラーとして大事な態度を学ぶためのエッセンスが凝縮されているのです。
カウンセリングや心理学はどこで学べるのか?
実際に、カウンセリングや心理学を学ぼうとしたら、どのような方法があるのでしょう?
看護学校に在籍していた頃、エリザベス・キュブラー・ロスのことや、エリック・エリクソンのことはテキストに登場していたのではないでしょうか。それらは心理学分野なのです。また「夜と霧」を読んだ方もあるかもしれません。
このようなことをもっと学んでみたいとお考えの方もいらっしゃることでしょう。
理論的なこともあればワークもあります。
とにかく学べればいい
自力で本など読み漁り(例えば、吉田哲先生は長く看護の現場に通じていました。)、ワークショップに参加するという手があります。看護師を中心対象としたものも散見されます。
カウンセリングのワークショップも学派によって開催形式は様々です。
例えば、上図のように車座で行われるような場合もあります。研修室に机を並べて行われるものばかりではありません。
もちろん看護の研修でもこうしたものはあると思いますが、異なる文化を感じる事と思います。
実は、当オフィスにおいてもそれに準じたことを企画しています。対話方式のカウンセリングを学ぶものではありませんが、そのマインドに触れることになります。詳しくは、対人援助職のためのセルフケア体験会をご参照下さい。
資格も取りたい
資格も取るくらいに考えているならば、大学院進学の方法があります。仕事との並行も不可能ではないかもしれませんが、かなり困難です。下記のリンク先は、相談機関の一覧ですが、臨床心理学を学べる大学院の一覧として見ることもできます。通信制は、別サイトにまとめています。参考サイト:臨床心理士を養成する通信制の大学院一覧
放送大学には臨床心理士養成コースがあります。入学はせずとも、視聴は環境があれば無料です。参考動画サイト:放送大学「臨床心理学概論(’20)」(テレビ科目紹介)
下記ページにまとめたリンク先は、臨床心理士を養成する大学院の一覧でもあります。
留意点
かなり、幅の広い業界だと認識しておりますので、諦めるのももったいないと言いたくなる気持ちもあったり、いや、なかなか自分の求めるものが見つからないことも多々あるとも思うところです。体系的に学ぶことからはじめるというよりは、すでに看護の専門職に在る方は興味に添った分野から入った方が良いようにも思います。心理職中心の勉強会であっても、他職種を受け入れているものも散見されますし、増えています。
心理学科に入学してもすぐには臨床心理学ばかりを学べない
上記のようにまとめた先は、ほぼ臨床的な内容の学びになります。
それならば、そもそも心理学科に入学して大学生になろう!とお考えになる看護師の方もあるかもしれません。
しかしながら、心理学科では特に前半の2年程は臨床とは無縁とは言えないのですが、受講している側からすると現場とは非常に程遠いところが中心になります。
レポートばかり書かされてがっかりする方もあるかもしれません。
日本心理学会のYouTubeチャンネルを視聴すると、「心理学」の全体的なところのイメージが明らかになるでしょう。
参考サイト:日本心理学会YouTubeチャンネル
カウンセラーが配置されて戸惑う現場の看護師達
カウンセラーが配置された現場には、どこか心理的なことはカウンセラーが言うところが最もであるという雰囲気が漂う場合があるように感じます。これはよく起こりがちなことです。
そのため、元々その現場にいた看護師は、ある種の迷いさえ感じてしまうことがあるのではないでしょうか。「自分の考え方は誤りだったのではないか?」と言う具合にです。自信を失くしてしまう人もあるのではないかとも思います。
カウンセラーが配置されることで、それまでにはなかった何かが持ち込まれるということはあるにしても、本当にそれまでの行いが覆されるほどのものなのでしょうか。
病院に限らず、学校でもカウンセラーが配置されると似たような経験をしている人がいると思います。時には、しばしの間、現場が混乱することさえあるのではないでしょうか。
もちろん覆されるほどのものであることはないのです。カウンセラーの振る舞いは、あくまでカウンセラーの視点からなされるものであって、それが唯一の心理ケアを表す振る舞い方であるはずがありません。
あるエピソードの紹介
看護師さんのケアに救われた経験を持つ人は多いものです。そしてそのケアは心理カウンセラーが行うケアとはまた別なものに見えます。つまり50分の専門的カウンセリングを行わなくても日々心理ケアは実践されているのです。
インフルエンザや胃腸炎の兆しを感じた時、職場ではだいたい他の職員から敬遠され始めるものです。
「今日はもう早退したほうがいいのでは?」「マスクはお持ちですか?」「熱はありませんか?」と心配そうに声をかけられることもあるでしょう。
しかし、どこか<私にうつさないでくれ・・・>という気持ちがにじみ出ているようでもあります。
仕方のない事ではあるかもしれませんが、当事者としては傷つきを覚えることでしょう。
そんな中、病院へ受診すると堂々した姿で看護師さんが横に座ってインフルエンザの検査に必要な採取を行ってくれるのでした。そこにはうつさないでくれという気持ちは微塵も感じられません。こんなとき患者さんはケアされたという気持ちになることでしょう。
看護師は非常に長い時間関わっている
看護師さんが患者さんと過ごす時間は、病院内の日常に近い時間とは言えないでしょうか。病棟に行けば、必ず看護師さんの姿を見かけます。そして、部屋をまわったり、ナースステーションにいたるするわけです。
看護師の役割日常と非日常に分けてみましたが、カウンセリングは、日常で行われている活動に支えられて成り立っていると言えると考えています。つまり、看護師さんたちの日常の振る舞いがあるから、カウンセラーは、カウンセラーの仕事に集中することができているわけです。
そして、カウンセラーが集中することで、より看護師さんたちの日常での振る舞いが活きたものとして加速されていくというイメージさえあります。どちらが先かと言えば、それは日常ではないでしょうか。
カウンセリングの取り入れ方
元々の職種の専門性があるなかで、他の専門職がカウンセリングを取り入れてしまって良いものなのでしょうか。この疑問や躊躇いを保持していただくことは重要だと考えております。さもなくば、現場での行いに混乱を招く結果に繋がると考えています。
カウンセラー側としては、一つの出来事に対して、医学や看護とは別の、独自の視点を述べることがある程度可能なのではないかと感じています。
(例えば、ずっと悩んでいる人がいる時に、それはうつ状態からきていると考える見方があります。一方で、何か時間や労力をかけるほどの重要なテーマに向かい合っているとも見えるわけです。)
そして、その視点は、もし取り入れられそうだったらとか、現場に馴染みそうであるということであれば取り入れていただき、逆に、馴染みそうでなければ止めておこうという選択肢を持っていただいた方が良いのだと思っています。
カウンセリングを学ぶことで、他職種の方にとっては、物事を別な視点から捉えるという、ある種、理解の仕方の幅が広がるという利点はあるのではないかと、そう感じております。
まとめ
心理学的知識を得ることも、援助職としての幅を広げることに一つ寄与すると思いますが、もう一つには、特に心理学的ワークなどを通して、心の中に何かが育まれるのではないかと思います。
これこそが、心理学やカウンセリングを学ぶ意義なのではないかと思うところです。
当オフィスでは、臨床心理学的な背景を持つ、リラクセーション法を用いたセルフケアのための勉強会も開催しています。心理学と遠いと感じるかもしれませんが、紛れもなく心理的なケア方法です。こうした学びから入ることも一つかもしれません。