最終更新日 2023年8月24日
カウンセリング料金に関する考え方は様々あります。1万円程度の費用を要する場合から、3千円程度、無料など、それぞれの機関の考えで料金は設定されています。
カウンセリング料金の高さには幾つかの訳がある
自治体などもカウンセリングを利用できる環境を整えているため、今後、無料カウンセリングは増えて行くと思います。
これは、望ましいことだと思います。多くの人が利用できる環境が整うわけです。
その上で、カウンセリングにおける料金について改めて触れてみたいと思います。
ある人:「 やっぱりお高いですね・・・。保険が効かないからなんでしょうか?」
カウンセラー:<それも大きいとは思います。病院で医師の診察代金を払う時、それは実際の料金の3割です。1万円の所が3000円を意味します。もしこれがそのままカウンセリングに適用されたら、一回あたり3000円くらいになるでしょう。しかし、料金については考え出すともっと色々な意味が含まれています。>
本題に入る前に、実際どのくらいのカウンセリング料金が設定されているのかを、まとめました。
機関により大きく異なるとお考えいただくと良いと思います。
私設開業は、やはり高い設定になってる
全国に点在するカウンセリングルームでは、10000円位が多いように見受けられますが、カウンセラーの考え方によりまちまちのようです。初回のみ無料とする場所も多く見受けられます。また割引などを採用している機関もあります。
心理臨床オフィスまつだの場合は、初回11000円です。
東京都内の調査結果
東京都内カウンセリングルームの料金をランダムに調査した結果があります。
こちらも参考になります。
比較的安価、無料の設定
大学院附属のカウンセリングセンターのような機関は、2000円~5000円程度でした。参考までに、東京大学大学院教育学研究科附属心理教育相談室の料金はこちらです。
また、自治体などが設置する窓口の場合は当然無料となります。
保険が効くカウンセリング
病院においてカウンセリングが行われています。令和2年度の保険診療改定により、公認心理師によるカウンセリングが一部認められることになりました。(「小児特定疾患カウンセリング料」)この場合、一回20分、200点、つまり2000円です。患者負担額は3割、2割、1割などとなるわけですから、2割なら400円ですか?誤解があるといけませんので、よくお調べください。
臨床心理士の専門性や諸経費との関係からの設定
これは、あまり重視しておりませんが、見方によっては臨床心理士のカウンセリング1回は1万円程度が妥当とする考えがあります。これはこの後に述べる本質的な事とは別な次元の話です。
臨床心理士は修士課程修了をベースとした、専門職です。このような職種は決して多くはなく、医師や薬剤師も6年生ではありますが、修士課程ではありません。
弁護士の相談料が、30分5000円という表記をよく見かけますから、それと同程度の料金設定になります。
賃貸で相談室を構えるような場合、1日にお会いできる人数や諸経費を考えると、このような料金設定になってしまいます。精神科医は、一日で数十人の診察を行いますが、カウンセラーは、8名程度でもギリギリのラインに迫ります。
よく誤解されがちな事ですが、1万円に料金設定した場合でも、決して大きな利益を上げるような結果にはなりません。
万が一、利益優先のようになってしまったら、もはやカウンセリングは機能しなくなるのではないでしょうか。
1万円にすることで特別な時空間へいざない、質を高めるという理由からの設定
さて、ここからが、本当の理由です。
カウンセリングは相談とは言っても、時間が明確に決まっており、場所も一定です。これらは基本的な事であり、「面接構造」などと呼ばれることがあります。
面接構造を決めてカウンセリングを行うことで、そこに、非日常的な時空間を作り上げているという風に言えるかと思います。
なんのために、それを設定するかと言えば、自由で安全な場所を作ろうとする意志があるわけです。これらについての詳しくは、下記のリンク先をご参照下さい。
そして、料金もこの面接構造の一つと捉えられるのではないでしょうか。
以下要点をまとめました。
気兼ねなく話せる
一つには、料金の設定は、気兼ねなく話すことができることに繋がると考えています。つまり、「自分の話を50分もしてしまって、カウンセラーに迷惑や負担をかけてしまったのではないか・・・」という気持ちになりにくいというものです。
カウンセリングでの語りは、相談のようであって単なる相談に終始しないことも珍しい事ではありません。語ること自体に意義があることも少なくないのです。
濃い時間となる
例えば1万円の料金設定は、限られた時間を有意義に使おうとする意識を発生させないでしょうか。1500円では、そこまでの意識にはなりにくいと思いますが、1万円という大金の中では、カウンセラーも、相談に来た方も、ある種の緊張感を持つだろうと想像されます。
もちろん、1500円だからと、カウンセラー側は手を抜いて良いはずなどありませんが。因みに、料金はカウンセラーへの技術料ではありません。
10000円の社会的重み
1万円は、我々の日常生活の中で大金に位置づけられます。裕福な人は1万円ぐらい大金とは言えないとお考えだと思いますが、それでも、社会においては、1万円の料金が発生する場所はそれほどありません。
つまり、この重みづけをすることで、ちゃんとしたことを行っているのだという意識も働くのではないかと想像しています。カウンセリングは非常に個別的なお話が語られる場所ですが、そのことに十分に労力や時間、費用を費やす意義があることを後押しできないでしょうか。
このように、料金を設定すると、我々の意識には、無料の場合とは別な意識が生起するのではないかと想像しています。繰り返しになりますが、もちろん、無料のカウンセリングを否定するものではありません。