イトーヨーカドー柏閉店のような環境変化とメンタルヘルス上の諸問題

今はもうない

最終更新日 2025年4月22日

4月というだけでも様々な環境変化に直面する時期でもあります。

この環境変化は、我々にとって何をもたらすのでしょう。

メンタルヘルスの面から言えば、やはり適応を迫られるというストレスが挙げられます。

適応ということはカウンセリングでもよくテーマにのぼることです。

今回の柏心理通信のテーマは環境の変化です。イトーヨーカドーの閉店のことなどに触れながら話を進めます。

イトーヨーカドー柏の閉店は、我々に何をもたらしたのか

2024年10月27日にイトーヨーカドーは閉店しました。

その後も一部の店舗は営業を続けていた模様ですが、いまでは人影を見ることはありません。

(※モスバーガーは継続しています)

柏駅前のシンボルの一つであったヨーカドーの閉店により生活も変わりました。

仕事帰りに買い物をしていた人はどうなったのか

閉店が決まってからか、段々と営業時間が短縮されていた記憶がありますが、それでも仕事帰りと思われるお客さんがたくさん食品フロアに行列をなしたものです。

みんなどこに行ってしまったのでしょう。

まるで中島みゆきさんの歌が聞こえてくるようです。(地上の星)

割引の総菜を期待していた人は多かった

仕事に疲れ果てたサラリーマン、それから諸々の人達の中には閉店時間の迫る頃を見計らって買い物に出ていた方もあるでしょう。

寿司などであっても40%引きになるのですから、そのタイミングを掴むことには大きな意味があるのです。

しかしながらどうでしょう、閉店してしまったのですからもうどうにもなりません。

ここで、我々は気持ちの整理をして、別な方策を編み出さなければならないのです。

これが適応を求められるということです。

喪失感も大きい

我々が失ったのは、総菜の割引だけではありません。長い時間をともにした場所を失うことは喪失感を伴います。

ヨーカドーと共に成長したという方があっても不思議ではない表現です。

なにしろ1971年(昭和46年)4月の開店から53年も営業したのです。これはただごとではありません。

連鎖的小宇宙の消滅

少し妙な表現を使いますが、振り返れば我々がこのところ失ったのはヨーカドーに限りません。

建物が残っているからというふん切れなさがありましたが、そごう柏も2016年に閉店したのです。

そしてコロナがやってきて、駅前の様子も一変しました。

かつて作成したある「地図」はもう意味をなさなくなりました。なぜなら。そこに記されていた店舗が軒並み閉店したためです。

柏市役所の食堂が、コロナの混乱の最中に閉店しています。一般開放されていたため、職員ではない人も利用できました。もう元には戻らないように捉えています。

毎日の食事を当てにしていた方も多かったのではないかと思うところです。栄養バランスも最高でした。

そんな風に駅前界隈にできあがっていたささやかな日常を小宇宙と例えるなら、それらが連鎖的に崩壊してしまったことになります。

何か、聖域を侵されたかのような安心感を揺さぶられてしまうような体験となってしまった方もあるかもしれません。日常が壊れるのはショックな事でもあります。

我々が適応を迫られている事

さて、このような環境変化の中、我々が適応を迫られたことを列挙します。

  • 新たな食品売り場を開拓し、その店にあわせていくこと:他の店舗が誕生したり、元々あったお店がグレードアップするなどの変動が生じています。これらのタイムスケジュールを確認したり、特徴を把握していく必要があります。
  • 栄養面:ヨーカドーや柏市役所の定食と同じ栄養をとれるものはありません。そのため、新たなスタイルを見出す必要があります。
  • 経済面:割引きにも頼っていたのですから、食費に圧迫される可能性があります。新たな割引を模索するのか、自炊に踏み切るのか選択を迫られています。
  • 運動量:市役所まで徒歩で食堂に出ていた人もそうですが、環境が変わると運動量に影響します。いつの間にか歩数が減ってはいないでしょうか。逆に増えすぎるということもあります。
  • 気持ちの整理:これも大きな作業です。先に挙げたように、日常を壊されたかのようなショックかもしれません。

総じて、新しいスタイルを構築しなければならないことになります。それには、エネルギーを必要とするものです。前々から閉店を予告していてくださったことは大きな救いとなりました。猶予期間をもらえたわけですから。

環境の変化とメンタルヘルス

カウンセリングにおいても、環境の変化がテーマにのぼることはあります。

仕事ならば異動や昇進などが環境変化にあたりますし、家庭では結婚や引っ越しなどがそれにあたります。

他にも、変化を挙げればきりがないものです。

これをライフイベントという言葉でまとめている研究者もいます。

その研究で特徴的なのは、良い出来事もストレスとなることに言及していることにです。

該当論文:The Social Readjustment Rating Scale”, Thomas H. Holmes and Richard H. Rahe, Journal of Psychosomatic Research, Volume 11, Issue 2, August 1967, Pages 213-218

※全文掲載は発見できませんでした。

また、別な角度から環境の変化を捉えるならば、それまでの環境が破壊され、新たな、或いはそれまで顕在化しなかったことへスポットがあてられようとするタイミングという理解も可能かもしれません。これは非常にカウンセリング的な発想だと思います。

しかしながら、「わかってはいても・・・」という気持ちを無視・軽視することはできるものではありません。

まとめ

変化とは非常に疎ましいものです。ずっとそのままだったら良いのにと思うこともあります。

「夏草や兵どもが夢の跡」などと松尾芭蕉が詠んだように、絶えず変化していくことが世の中の常であることを誰しもが知っています。知ってはいても・・・それはよくわかっていても・・・というところが人間なのだと思います。

続けて、「柏神社のみその姿を残す」などと詠んだら良いでしょうか。

ともいえず、立派に大規模修繕工事を終えました。