最終更新日 2024年12月29日
物事は特にうまく進まなかったり、滞っていたりすることがあります。人間の生活は多様ですから、普段の生活の中でそのようなことが起きたとしても不思議ではありません。そのような時に我々はあれこれ試してみたり、考えながら物事と取り組んだり、解決したり、時に放っておいたりしているわけです。
何らかの問題と対峙したとき、カウンセリングにおいては、どのような発想を持つのでしょう。
解決志向アプローチの見方や発想もカウンセリングにおいて時に注目されます。
まず初めに、原因を特定するという発想があります(因果論)。原因を明らかにすれば、その対処法も考えやすく、合理的に対処可能となるわけです。
そして、非常に一般的に使われる思考であり、実際的な方法です。現代文明は問題志向によるところがかなり多いわけです。
例えば、パソコンが動かなくなってしまった場合、電源の問題なのか、システムの問題なのかが特定できないでいると、無用な事に時間やエネルギーを消費することに繋がりかねません。ですから、電源の問題かシステムの問題であるかを確認することから始まるでしょう。
そして、仮に電源が老朽化し、コンセントの交換が必要ということになれば、それは直ぐにメーカーや販売店に問い合わせるなどして解決できます。(もっとも、生産終了などということもありますが)
ソリューション・フォーカスト・アプローチ
こういった思考方式は実生活を送る上で非常に有用であることには違いないでしょう。
実際、最近よく聞くPDCAサイクルなどは、問題志向に基づく発想でしょう。あの発想は、医療安全の分野などに用いられ、事故を防止するシステムとしても採用されています。
針刺し事故を防ぐために、事故の発生状況を把握し、事故の発生しない注射の取り扱い方法を考案するなどがその例となります。
一方、世の中には原因がどうしてもわからなかったり、わかったところで解決策が見いだせないことがあることも事実です。このようなとき、解決志向という発想も有用な場合があります。
解決志向の特徴
解決志向では、簡単に述べれば、どうやったらうまくいくかという点に注目する発想を持ちます。
問題志向では、まず原因を明らかにすることに意識を向けますが、そこには触れず、解決に役立ちそうなことは何かという点に注目します。
つまり、これがソリューションフォーカストアプローチと言われる所以となるわけです。ソリューション(解決)の方に焦点を合わせていくのです。
また、解決志向アプローチはかなりシンプルな発想であることも特徴の一つと言えるでしょう。大きく分けて三つのことを念頭に置いた発想の繰り返しになるのです。
そうした発想のもとに話を進めて行くと、解決案が浮かび上がってくるようなことがあるわけです。こういう話し合いのようなことをソリューショントークと呼んでいいのではないかと感じます。
例外の発見
解決志向アプローチについて少し触れたことがありますが、今回のテーマは、解決志向に関係する内容です。
そもそも解決志向という言葉は、多く、ソリューション・フォーカスト・アプローチの分野で使用されます。それほど多くの人が学んでいるわけではありませんが、カウンセリングを学ぶ人が触れる考え方やアプローチ方法の一つに挙げられます。
そして、ソリューション・フォーカスト・アプローチでは特徴的な質問の方法があるのです。
スキルと言えば、スキルなのですが、態度・発想という方が実際的なカウンセリング場面に合致していると思います。
今回は、例外の発見ということをキーワードに書いてみたいと思います。もしかしたら、例外的にその悩みが出現しないことがあるかもしれません。それは聞いてみないことにはわからないのですが、悩んでいる当人はあまり意識してもいないことだと思いますので、かなり意外な質問をされたという印象を受けるでしょう。
いつも遅刻してしまう人
具体的な例を挙げれば、「いつも遅刻」してしまうという悩みがあったとします。(フィクションです)例えば、何かの悩みがあると、毎回、必ずその悩みは出現し、決して解決されたことなど一度もないのでしょうか。
ご本人としては、遅刻してはいけないとお考えでしょうから、遅刻に悩んでいるわけなのですが、もしかしたら、毎日遅刻しているとは限らないわけです。
特徴的な質問の仕方
そんなときに、<ところで、間に合うときもあるのですか?>と質問してみることができるでしょう。
つまり、この質問をすることによって、遅刻しなかった時の状況を伺うことができ、そこには既に一部解決に向かうヒントがあると感じます。
「遅刻は、10日に一回位の割合ですね。そういえば。それ以外はなんとか間に合ってます」
と、このようなことが述べられる可能性もあります。
部分的な成功が既に生じていた
ここまで話が進むと、<では、遅刻しないときはどうやってるのですか?>と、もう少しつっこんだ質問をすることができるわけです。
どういう展開になるかはわかりませんが、「前の晩風呂に入って良く眠ると目覚めが違うんですよねー」とお話になられるかもしれないわけです。
ここまで話が進むと、前の晩風呂に入ってみる方がいいなどという、対策のようなものが生まれてきます。
果たしてこれが役に立つかどうかはわかりませんが、負担にならないようであれば、お風呂に入る時間なども大事にしていただけるようにお伝えすることも可能でしょう。
ご本人が納得していたり、腑に落ちた感じがあったならばうまくいくかもしれません。
ですが、ご本人が、「そんなことでは・・・」と感じていたならば逆に負担になって、その人の生活リズムを益々壊してしまいかねません。
解決志向とは解決方法を押し付けることではないわけです。
解決志向では、こんな風にして話を進めて行くことがあるわけです。
当オフィスのカウンセリングにも、この視点はふんだんに取り入れております。
何が原因だったのかではなく、どんな力を使ったのかを明らかにする
リソースという言葉は、「資源」というようなニュアンスです。既にその人がもっている力、能力があると考え、それが解決に役立つものになるという発想を持ちます。
例えば、先にあげたパソコンの例であっても、解決志向の発想から解決することが可能であったかもしれません。社内でパソコンを数台使っていたならば、似たような状況が過去に発生していたかもしれません。
そこで、社員には、「パソコンを復旧したとき、どうやったのですか?」と聞いてみるという手が思いつきます。
「何が原因だったのですか?」とは聞いていません。
そうすると、ある社員は、「とりあえず古いパソコンの電源を借りてみたらすぐに動いたんですよ。5分くらいで解決しました。」などと言う社員が出てくる可能性すらあるわけです。
これを聞いたとき、「ではとりあえず試してみよう」ということで電源を取り換えてみたらさっそくパソコンが動き出した、などという結果が導かれることもなくはないのではないでしょうか。
この場合、原因を特定しようと躍起になっていた時と比較してかなり効率的で、省エネです。(原因を特定することを否定するものではありません。)
このようにして問題が解決されたとき、それは社員の今までの経験というリソースが生かされたことに繋がると思います。それは既に存在したものであり、付加されたものではないのです。
まとめ
世の中は概ね、原因、それもとりわけ失敗の原因を追究し明らかにすることで改善策を見出そうとする指向があります。
もちろんそれも必要な発想ではありますが、原因を追究される「人間」側は気分のいいものではないことも多いでしょう。
そうしたとき、成功の原因を追究するというのは安心感を伴うカウンセリングの方法と言えるのではないかと思います。