最終更新日 2025年5月20日
新型コロナウイルスの関係で現在多くの場面において、普段とは別な形での会議開催なり、コンサート開催なりが行われています。 無観客でライブを配信したりするアーティストも多くなっています。
無観客・無配信ライブは心理療法の元型
無観客・無配信・・・さて、この響きから直ぐに状況を理解できないものだとは思いますが、これは間違いではありません。 あるお笑いコンビが実際に企画・予定していたそうです。(中止となったそうです)
つまり、お客さんは入れず、はたまたインターネットを通じての配信も行わないライブという意味に他なりません。 ライブ自体はいつも通り行うけれども、それを見ることはできないライブです。 それにどんな意味があるのかと疑問を呈さずにはいられないという人もあるでしょう。
そして、その疑問はよくわかります。 我々が考えていることとは別な意図があってのことかもしれませんが、無観客・無配信ライブは、その人らしくあることを確認できる時間となるのではないでしょうか。
武人で言うならば、修練ができない日でも道着に着替えて過ごす人などが、かなりの数日本にいらっしゃると想像しています。 我々は、誰も聞いていなくとも、たった一人で食事をとる場合においてもさえ手を合わせて、「いただきます」と声にするものです。
神仏の類や、知り得ない生産者や物流関係者の誰かに伝える感謝という意味も多々ありますが、一方で自分自身への何か大事な行いという面もあるのではないでしょうか。
少し説教染みた感じになりますが、禅の世界では脚下照顧という言葉もあります。
参考サイト:脚下照顧
カウンセラーが道(タオ)になる・・・アメフラシ男の話から
心理療法の一つの元型をアメフラシ男のエピソードをもって説明されることがあります。 これは中国の古いエピソードを心理学者のカール・ユングがリヒャルト・ヴィルヘルムから聞いた話とされます。
その詳細には触れませんが、つまり心理臨床家自身がブレた状態にあっては良い仕事はできないもので、自分自身を整えることにまず専念する必要があります。 もしどこかの組織の中でカウンセリングを実践する時に多額の謝礼を積まれたらどんなことが起きるでしょうか。
人によっては、こんなにお金をもらうのだったら1秒も無駄にできない!などと妙に力の入ったカウンセリングになってしまうのではないでしょうか。 例えば、早く成果を出さねばなどという方向に走ったならばCLのペースを尊重することから大きく外れてしまうことになりかねません。
つまり、そんな状態では良いカウンセリングはできないものですから、まずはカウンセラー自身がプレーンな自然体に戻る必要があるのです。 これは当然、お金を積まれた場合に限りません。 災害時に支援に入る機会が心理臨床家にもありますが、その場合カウンセラーの個人的な思いが強く出てしまったらどうなるでしょう。
人を支援したいという熱い情熱は尊敬されるものですが、しかし単純な事ではないように思います。 もしかしたら厚かましいカウンセラーとして映るのではないでしょうか。 まずカウンセラーがタオになる必要があるのではないでしょうか。そして対人援助職全般に応用の効く話かもしれません。
- 関連サイト:心理支援とは
カウンセリングが何かの影響によってブレた例
逆な切り口からこの現象を描写すれば、このようになります。
ブレてしまった状態では、カウンセラーは時にやたら道徳的になったりもします。
例えば、「仕事をサボりたくなった」という思いが語られた際、その思いをそのまま理解しようとするわけですが、道徳的になっているカウンセラーの心理状態では、説教染みた事を言う事になるかもしれません。
それはもうカウンセリングではなく、カウンセラーが上司や先輩の役割をとってしまったようなものです。
なぜカウンセラーがそのような態度になってしまったのかといえば、その少し前に社長の講話を聞いていたためです。社長は売り上げが下がっていることを仕切りに訴え、他の社員たちのやる気を鼓舞していたからです。そして、拍手が巻き上がり、いい雰囲気になっているのを見てしまっていたのです。
これならこの会社も一致団結して益々売り上げを上げていけそうだと感じたばかりだったのです。
その後で、「仕事をサボりたくなった」と続いたわけです。
そうして、自由や安全を大事にするカウンセリングとはかけ離れた時間になってしまうのです。
この他にも、時代のトレンドのようなものでも影響を受けている可能性があります。例えば、女性活躍という言葉が飛び交う現代において、極端に言えばそれこそが唯一の女性の進むべき方向だなどと考えが固くなっていくのです。
その場合、働くことを望んでいない人に働くよう圧をかけるかのようなカウンセラーになってしまうかもしれません。
真実、或いはその人の望む真実とは世間の熱とは別次元のことなのです。カウンセラーに求められる態度としてはせいぜい、「近頃は女性活躍という熱が上がっている模様だ」、というくらいの態度になるのではないでしょうか。
- 関連ページ:専業主婦からの社会復帰には怖さも伴う
まとめ
カウンセラー自身が、何かの影響を受けてしまう事なんてあるのでしょうか。
これは、あってもなくても、「ある」という前提で当たる方が良いのではないかと考えております。
それは、プロとしてそういう意識を持つべきではないかということでもあります。
「初心忘れるべからず」という表現があるほど、誰しも基本を疎かにしてしまうことがあるものです。
それは、「おごり」でもあります。「天狗になる」でも良いでしょう。
ビジネスマンなら毎朝欠かさず新聞を読むように、カウンセラーにも自己点検することが求められるわけです。