カウンセラーの視点として、「それ」には何かの意味があると考えることがある

はっとする

最終更新日 2025年5月24日

カウンセラーとして活動し、学びを続ける中で大事にしてきた視点の一つには、「そのことには何かの意味がある」ということがあります。

例えば、仕事へ行きたくないとか、学校へ行きたくないという語りは、何か非常に問題があり、社会的にはあまり前向きには受け取られないことがほとんどでしょう。

そのため、このようなことを友人や家族の前で口にすると、仕事は楽じゃないんだぞ、とか、今勉強しないでどうするんだ、という返答が返ってくることが多くなることは想像がつきます。

なぜ学校や職場に行きたくないという気持ちが起きているのか、当の本人にもそれほど強く意識されていないことがあるでしょう。その場合、家族や友人から上記のような返答があった場合には、自分が甘いのだと、自分自身を責めるということになるでしょうか。

こうした経験は、何らかの形で経験した人は多いと思います。

カウンセリングにおいては、「それには何かの意味がある」という捉え方を大事にしている

どういうことで行きたくないかという点については、じっくりとお話を伺ってみないことにはわからないものですが、このような時、カウンセリング独自の視点からすると、その人の内面に何かが起きていて、それはその人の生き方をより豊かにしようとする意味ある作業ではないか、という視点を持っているわけです。

こうした視点で考えてゆくと、職場に行きたくないという気持ちを無視しないで大切に扱ってみることは、これもまた意味ある作業ということに繋がっていきます。

そして充分に悩んだことをきっかけに、その後の仕事への取り組み方が変わったり、仕事に充実感を見出すこともあり得ると考えています。

悩むこともなかなか前向きには捉えられないことが多いわけですが、悩むこと自体にも大きな意味が備わっているようです。

意味があるとはどういうことを指して言っているのか

先に記したように、就業意欲の低下が、「実は自らの働き方を追求し始めた兆候」というようなことを指しているわけですが、幾つか例を挙げてみます。

既に、他のページにもそれらしきコンテンツは作成しています。

物悲しい冬はどうでしょう。これは人類が長い歴史の中で知って来たことでもありますが、冬は季節の終わりではありません。あのように葉っぱも落として物悲しい様になる事には意味があるわけです。それはつまり、春を生み出す力を蓄えているためです。これについては別項をご参照下さい。

また、リフレーミングに関連してもそれらしき視点を散りばめています。教師に猛烈に意見するようになった生徒についてなど書いています。教師に意見が言えると言う事は「成熟」が進んだためではないではないでしょうか。

家賃滞納が体調へ意識を向けるきっかけとなった

少し変わった例えになりますが、逆にそんなことにも意味が見出されるのか・・・という風に読んでいただけばと思います。色々応用が利くこともあります。

「家賃滞納により急な引っ越し」などと聞くと、少し複雑な気持ちにもなってきます。

こうした場合には、引っ越しというイベントは何ももたらさないものなのでしょうか。むしろ引っ越しが悪影響にさえ思えて来ます。

こうした話は決して一般化できるものではありませんが、それでも尚、何かの意味がある出来事だったのではないかという視点で眺めてみると、その引っ越しが意味深に思えてくることもあるでしょう。

家賃を滞納した理由も幾つか考えられると思いますが、例えば、自動引き落としのために準備した口座の残高が不足していただけということだったかもしれません。支払う余裕があったのにも拘わらず滞納してしまったのです。

そして、いきなり退去ということはあまりなく、何度も催促の連絡が来るものです。数か月にわたってです。

これは、大家さんにしてみると非常に悪質な人と見えるかもしれませんが、滞納してしまったご本人の人生という視点から見ると、何かが起きているように思えて来ます。

例えば、家賃を払い忘れているということから想像すると、「多忙」というキーワードが連想されます。ご本人に聞いてみないことにはわかりませんが、もしかしたら、現実的なことに意識が向かないほどに、何かに忙殺されていたのではないでしょうか。

こうしたとき、家賃も滞納してしまったという反省をなさるかもしれませんが、一方で、このイベントは、例えば今後の働き方になにがしかの示唆をもたらす可能性があると考えられないでしょうか。

または、もっと長期的に家賃を忘れるような生活が続いていたとしたらと考えると、体調を崩していた可能性も考えられるでしょう。

すると滞納は意味ある出来事に思えて来ます。

この場合滞納は、調整の作用を持っていたのです。

このことをきっかけに、何が自分の人生にとって大事なことであるか、または、どのようなライフスタイルがあっているのか、自分らしく生きるとはどのようなことを言うのだろう、などという問いかけをはじめるきっかけとなるかもしれません。

家賃滞納による急な引っ越しなど避けたいことですが、そのことが物語るもう少し大きな意味が背景には潜んでいるのかもしれません。ここに、よりよく生きることも可能性も含まれているのではないかと感じます。

これは、家賃滞納とか退去を例にしましたが、もっと別な事にも応用できることかと思います。

このような視点から気持ちの整理が進むこともあります。

意味なんて何にもない

こんな風に書いてしまうと、別なサイドからは意味なんてあるわけないという言葉が飛んできそうです。

当然、それには何かの意味があるなどと強要するものではありません。

また意味を見出そうなどという心情にないときもありますし、意味などないこともあるのではないでしょうか。

そんな時に、意味があるなどと押し付けては、それこそ何の意味もないカウンセリングと言えるでしょう。

意味を探してみたいという方にとっても開かれた時間にしたいと思いますし、そうでない方にも開かれた時間であろうと考えています。

まとめ

何かの意味があるという態度は、時に辛さを生んでしまう可能性を秘めていることも承知しています。意味を押し付けるなどということは避けなければなりません。

どのような意味が対話によって生成されてくるのか、それもやってみないことにはわからないこともあり、そして生成されたとしても、それが自分にフィットする物語であるかどうかの吟味も重要なことになります。