最終更新日 2025年5月6日
このページでは、医療従のストレスマネジメントについて、架空の実践例を挙げています。
それを通して、組織におけるストレスマネジメントの方法を概観しています。
昨今、感情労働などという言葉を聞く機会が増えました。
医療従事者においてももちろん、なんらかのストレスマネジメントを実践することは援助の質を保つ意味でも大きな意義を持つと思われます。 しかし、特殊な職業ともとれる医療従事者のストレスマネジメントをどのように実践した良いのでしょう。
ある心理士の取り組みを例に実際に触れています。これは臨床心理的地域援助とも言える活動になります。 ここでは、物語風に、ストレスマネジメントを実践していく様子を書いていきます。ストレスマネジメントの方法はそれぞれで、唯一の形があるというものではありません。幾つかの活動を知っておくことは非常に意味のあることだと思います。
- ある病院で医療従事者を対象としたストレスマネジメントの方法
- 第1話:副院長から全く新しい視点から職員のストレス対策を実施せよと要請がある
- 第2話:厚生労働省が労働者の心の健康を保持増進するために重視する4つのケア
- 第3話:たくさんの委員会に追われて疲弊する同僚看護師達
- 第4話:シンプルなプランがベストと考えた
- 第5話:医療従事者の職場環境上の特性を考慮したストレスマネジメントプログラム
- 第6話:振り返りシートを活用してまとめる
- 第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
- 第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
- 第9話:収拾のつかない会議
- ポイントは心理的安全性にある
- ライブ方式でのストレスケア法提示はPowerPointより伝わるが、密かにでも練習をしてはどうか
- 広報・告知に関する工夫
- その他、結びに
ある病院で医療従事者を対象としたストレスマネジメントの方法
副院長からこれまでにないストレスマネジメントの要請を受けた心理職Aさん。病院内をよくよく観察していくと思うところも出て来たようです。Aさん独自の方法はうまく行くのでしょうか。フィクションです。
- 第1話:副院長から全く新しい視点から職員のストレス対策を実施せよと要請がある
- 第2話:厚生労働省が労働者の心の健康を保持増進するために重視する4つのケア
- 第3話:たくさんの委員会に追われて疲弊する同僚看護師達
- 第4話:負担をかけないシンプルなストレスケアを旨とした
- 第5話:医療従事者の職場環境上の特性を考慮したリラクセーションプログラムの作成
- 第6話:振り返りシートを活用してストレスマネジメントをまとめる
- 第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
- 第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
- 第9話:収拾のつかない会議
第1話:副院長から全く新しい視点から職員のストレス対策を実施せよと要請がある
このページは、ある心理士の取り組み(フィクション)の1話目です。現在8話まで話が進んでいます。心理職は、様々な現場に配置されています。Aさんは、職員数1000名ほどの病院に勤務していました。ある日、副院長に呼ばれ、下記のような話がありました
副院長からストレス対策の要請を受けたAさん
副院長:「病院では、ストレス対策を推進している。君の専門領域だと思うので、やってみて欲しい。通常の業務や他の委員会で皆手がいっぱいな面もあり、申し訳ないが、ひとまず一人でやってみてくれないだろうか。その代わり内容は君に一任する」
1000名規模の組織のストレスマネジメント
なんとも、まるで、Aさんが暇人であるかのような言われ方をしてしまいましたが、快く承諾し、直ぐに考えをまとめはじめるのでした。
ストレス対策と言っても、実はその幅は広く、1000名規模の組織であれば、既に対策がなされている面もあります。もし、心身の不調で休職した職員の、復職までのスケジュールをどのように組むか、復帰の判断はどのように行うか、などAさんの職場ではこれらのことは、既にしっかりとしたシステムが出来上がっていました。
それでは、副院長は何をもって、ストレス対策ということを依頼してきたのでしょう。
これまでとは全く別なアプローチ
副院長の言葉を借りれば、「君にはシステムというよりは、啓蒙や具体的なストレス対処の面で、もう少しできることがないか実践してみて欲しい。職場の環境改善も重要なことだが、それには限界もあるし、また別な人がそれはずっと考え続けている。
これまでとは全く別な視点やアプローチを、心理専門職の立場から模索してもらえないだろうか」 副院長の考えは、何か今行われている視点とは別なことにあったようでした。 さて、このような活動は臨床心理士の専門性で言うところの、臨床心理的地域援助という専門性と関係してきます。副院長がAさんに依頼したことは、的外れではなかったのですが、果たして何か副院長が納得するような結果が出せるものでしょうか。
Aさんの迷いは広がります。
- 関連ページ:臨床心理的地域援助も行う
第2話:厚生労働省が労働者の心の健康を保持増進するために重視する4つのケア
この物語は、数話に分けて書かれています。こちらは第2話です。
ストレス対策と言うと、かなり漠然としているように思えますが、厚生労働省は、関連する指針を既に平成18年には発表しています。Aさんも専門職として知識があったため、その指針をもう一度読み返してみました。
厚生労働省の指針が示す4つのケア
労働者の心の健康を保持増進のための指針(外部リンクです)という内容です。この指針では、漠然としている内容が、4つのケアという具体化された指針として示されています。これはストレスマネジメントを進めるうえでも参考になりそうです。
4つのケアとは
その4つのケアとは下記の通りです。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業場内産業スタッフ等によるケア
- 事業場外資源によるケア
厚生労働省は、この4つのケアを骨子に考えています。 この指針は、個人レベルでできることから、職場環境の改善、職場内外の資源の活用までを視野に入れており、枠組みを考えるうえで参考になりそうでした。 Aさんは、早速、病院の取り組みがどのようになっているかを、4つのケアの観点から検討してみました。
セルフケア
Aさんの病院では、毎年、職員研修の一コマに、メンタルヘルス関連の講義を取り入れていました。その中で、ストレスやその対処に関する知識を得ることができるようにプログラムされていたのです。全職員が対象で、出席できなかった職員には、資料の配布も行っていました。
ラインによるケア
管理職向けの研修は、全職員対象の研修とは別にも設けられていました。気になる部下の様子が伺えたら、どのようにしていこうか、などというテーマの研修が行われていたのです。また、職場内のストレス調査も定期的に行われ、その結果の概要もまとめられていました。
事業場内産業スタッフ等によるケア
事業場内産業スタッフには、医療機関という関係上、多くの職種が揃っていました。医師をはじめ、看護師、保健師、臨床心理士などです。 職員向けの、相談室が解放されていました。また、衛生委員会が設置され、どのようにメンタルヘルス対策を推進するか、計画も立てられています。
事業場外資源によるケア
総務部が開拓したカウンセリングルームがあり、職場外でもカウンセリングを受けられる体制が整っていました。その他にも、メンタルヘルス関連する外部の情報を相当に蓄積していました。 Aさんは、これらを調べ終わると、自分の仕事は一体どこにあるのだろう?と益々迷いを深めてしまいました。
自分も、衛生委員会に混ぜてもらった方が良いのではないか?しかし、副院長は一人でやるように言っていたし・・・。 この他に何かできそうなことがあるのだろうか。
第3話:たくさんの委員会に追われて疲弊する同僚看護師達
第3話です。
もう話が進んでいるのに、新たに何を付け加えるというのでしょうか。不足していることがあるにして、委員会で次第に検討が始まるでしょう。
副院長が言う、全く別な視点とはなんのことだろう。病院内では、同僚が忙しそうに、カルテやベッドを運んでいる姿があります。こんなに忙しそうにしているくらいだから、きっとストレスも大きいことは確かなのでしょう。
委員会に追われて同僚看護師達は疲弊していた
そんなときに、聞こえてきたのは、「会議に送れちゃう・・・」とせかせかと通り過ぎていく同期の姿でした。現場に入りながら、時間が来ると会議に出席するのだそうです。その同僚は、いくつも委員会に所属して、会議も多いと以前に言っていたのを思いだしました。
会議のストレスは明白だった
会議がストレスになっていることは明白でした。1時間でも2時間でも続くのだそうです。それが幾つもあるらしく。
しかし、会議をなくしてしまうわけにもいかないだろうしなぁ。とAさんは益々悩んでいくのでした。 Aさんも経験がありますが、会議では若手は特に、緊張を伴い、一つの会議に出るだけでも多くのエネルギーを消耗します。
何か、愚痴でもいえる場所があればいいのだろうか・・・皆飲み込んでいるようなことがあると思うだけど。しかし、それも難しい話だな・・・。 上司や部下、同僚という関係が複雑にある中で、一辺倒なやり方で実現可能なものだろうか。
体調を崩した同期
数週間、Aさんは迷いが続いており、たくさんの資料にあれこれ目を通しました。そのとき、同期が体調を崩して、しばらく休むという話が伝わってきたのです。ある管理職から聞いた話では、こうした体調不良で休む職員が増えてきているのだそうです。
4つのケアの推進は進んでいても、体調を崩して困っている人はやはりいるようです。 Aさんとして、このような人への支援が何かできないものかと考えていました。
Aさん自身の専門性を振り返ると、リラクセーションなどの手技を身に着けており、何か役に立てられないものでしょうか。 例えば、漸進的筋弛緩法という、セルフケアにも使える方法があります。しかし、それならば職員研修でもう紹介されていたのだそうです。
あとがき
病院も会議、会議、会議ばかりです。もちろん必要な事ではあるのですが、それにしても多すぎます。いつの間にか事務職になっていたかのような人もいることでしょう。
「病院機能評価」が一番の背景要員ではないでしょうか。機能評価の基準を満たすため院内を奔走し燃え尽きた援助職者は数知れないのではないかと想像しています。(関連:対人援助職の燃え尽き症候群)
- 該当サイト:病院機能評価とは
第4話:シンプルなプランがベストと考えた
第4話です。
Aさんは迷いながらも、職場内をよく観察した結果、幾つかの視点をもちました。
- シンプルなプラン
- 職場内に生じる役割、立場という要因
- 自発的な参加
この3点をまずは、Aさんの企画の柱にしようと考えるに至ったのです。
病院内は、多忙で、多くの会議や研修で溢れかえっています。そのため、新たに新しい研修や調査を組み込むことは、職員にとって新たな負担が増えることに直結する可能性の方が大きいと考え、大げさな研修や、調査は行わないことにしました。
そもそも、衛生委員会が実施したデータがあるので、それを参照すれば調査を行う必然性もなかったのです。また、これまで行われてきている取り組みに敬意を払う態度を忘れないようにしました。
職場内で生じる役割、立場という要因
いろいろな関係性の中で、遠慮したり、逆に責任を負いすぎたりする職員が出てしまう場面もありました。これが組織の性質と言えばそれまでですが、普段の関係性を持ちこまない形での企画を実行することに意味を見出したのです。例えばそれは、安全に参加できる勉強会の企画などになります。
自発的な参加
いわば義務的なメンタルヘルスに関する研修は、十分に行われています。さらに、出席を義務付けるような勉強会のスタイルは避けたいと思い、参加してもしなくても良い勉強会というコンセプトを挙げました。自発的に参加してみたいという時に、大きな成果が上がるのではないかと考えたのです。
企画案
以上の3点をもとに、Aさんはリラクセーションを主軸に据えた勉強会の開催を考えました。急ぎで、企画書をまとめ、副院長に話を通しました。シンプルを旨としているので、全ての準備から運営、片付けまでをAさん一人で完結できる案を考えました。 副院長は、「やってみて下さい」と言ったのでした。
後書き
ストレスケアに限らず、組織内で新しい取り組みがなされると、「また負担が増える・・・」という声ばかりが聞かれます。そして、上司が怒って、いやいや皆で取り組む姿があります。ストレスケアにおいても同様のことが起き得ますので、そうはならない、負担を生まない配慮が求められます。
第5話:医療従事者の職場環境上の特性を考慮したストレスマネジメントプログラム
第5話です。
Aさんは、ポイントを整理して、ある勉強会を企画することを考えました。 通称「リラックスの会」として、参加した職員にリラックス感が残る勉強会を考えたのでした。 企画にあたっては、これまで考えたことから、幾つもの工夫を凝らしました。 医療従事者向けの会を開催する上での工夫として・・・
- 病院には、多くの部署があるので、部署単位、またはそれ以下の人数でも開催
- 義務ではなく、あくまで自由参加であり、申込み性とする
- 時間や場所は、極力申し込んだ人の希望に合うものとすること
- 会の内容は、15分、30分、60分、90などの複数バージョンを準備
このように、とにかく、職員が新しい負担が増えるというプレッシャーを受けないような配慮に全力を傾けたのです。医療従事者を取り囲む職場環境を全く無視した形の計画では、ストレス対策が逆にストレスをもたらしてしまう可能性に留意したのです。
業務の合間に、1時間の時間を作ることは困難でも、30分単位であれば、参加したいという人もいるかもしれません。全職員一斉にという形では実現できなかったことも、この形式であれば、かなりの柔軟性を持って参加してもらえるのではないかと考えました。
Aさんは、早速、各部署に貼り紙をお願いして、興味のありそうな人へ情報が届くようにしました。連絡方法には院内のメールや、直接予約、電話があり、職員の都合で連絡でしてもらうようにしたのです。
リラクセーションプログラムの内容
さて、会のプログラムですが、何パターンもの実施方法を準備しました。主に漸進的筋弛緩法を用いたリラクセーションになりますが、講義を入れる場合と短くする場合など、筋弛緩法の実施時間、モデル提示の時間、筋弛緩法以外のリラクセーション法の提示など、Aさんの中では数十パターンのやり方を想定していました。
広報では、主に椅子に座って行う場合、床に横になって行う場合、立ったままの姿勢で行う場合の3パターンとしました。内容によって、時間を調整できるため、30分からの開催が可能なのです。
横になって行うプログラム
横になってのプログラムでは、通常やや広いスペースを必要とします。その場合、広い会議室が適切なのですが、毎回会議室を押さえることは難しく、会場の確保だけでも多くの労力を必要としてしまいます。そこで、柔らかめの床であれば、即席でシーツやシート類を用いて、簡易の会場を作ることにしました。
また、どうしても硬い床しか確保できない場合には、移動式のマットを持ち込むことで、場所を選ばずに勉強会を開催することが可能となりました。横になってのプログラムは、手や足、顔を順番に弛めて行くオーソドックスなプログラムで、リラックス感も得られやすいものとなりました。
椅子で行う内容
会議室タイプまた、何かの会議の一コマで、リラクセーションを紹介して欲しいという要望が挙がることもあり、その場合は、椅子、または立ったままできるリラクセーションのプログラムを用いることにしました。
会議の中に勉強会が組み込まれることはよくあることで、その場合、わざわざ会場を作り直す時間はありません。すぐに内容に入れるように、椅子、立ったままの姿勢を中心にしたプログラムを準備しました。この場合、所要時間は15分が限度です。椅子の場合でも、基本的にリラクセーションを行う部位は同じです。
- 混合
時間が十分にあり、いろいろな方法を紹介することが可能な場合には、椅子や立位、横になった形などの方法を混合でプログラム化しました。また、講義方法にも工夫を加え、ワークショップ形式にする場合と、単にこ講義を行う場合とで分けました。
プロジェクタで資料を映し出す方式にも対応し、また、A3用紙を両面印刷した資料でも対応できるようにしました。もしもの場合は、紙の資料を用いずに行えるようにも準備したのです。ここまで準備をするとある程度のアドリブも可能になっていきました。
ポイント
この企画のポイントは、会を大げさにせず、こじんまりと実施できる点に特徴があります。もちろん大規模に行うことも可能ですが、多くの場合数名単位の開催が多いものです。その場合、大人数向けを前提にしてしまうと、開催自体に労力を費やしてしまい、また得ることも少ないという結果すらあり得ると考えたのでした。
Aさん自身は何度もこのプログラムを準備したり、実施する必要がありますが、その点についてもこじんまりした計画のためそれほどの負担にはならないのです。プログラムは使いまわしで何度も使用できますし、会場準備にも10分程度の時間しかかからないのです。
★リラクセーションとは 緊張を弛める方法の一つには、リラクセーション法の活用が挙げられます。 我々は日常生活の中でも、自然とリラクセーションを取り入れているものですが、臨床心理学の方面からも、専門的な方法が確立されています。
エドモンド・ジェイコブソンによって考案された方法です。長い歴史があり、現在でも心療内科等の領域で活用されています。非常に導入しやすい方法でもあり、教育現場や産業関係でもよく用いられています。
- 自律訓練法
ドイツのシュルツによって考案された方法です。漸進的筋弛緩法と同様に、心療内科などで用いられています。体を大きく動かすような方法ではなく、手や足の重温感などの練習からはじめる方法です。
日本で成瀬悟策によって、考案された方法です。元々は動作改善の方法として始まりましたが、その領域は拡大し続けています。スポーツ動作法という分野も登場しています。 これらは単にリラクセーションということには留まりませんが、リラクセーションにも大いに活用できる方法です。
会場の工夫
最後に会場面の工夫を加えます。
ストレスケアの勉強会を開催する時、「会場づくり」も一つのポイントになると考えています。会場によって、実施できる方法が変わってきてしまうという現実があります。
そのため、練習段階で会場の事まで思いめぐらせておく必要があります。うつ伏せの方法をたくさん練習したのに、当日は椅子だったなどという場合があるのです。
どのような会場準備をすれば良いのでしょう。
- 会場はシンプルに、最小限の力で作り出せるくらいの規模にする。
- 可能な限り椅子にも注意を払う
- その他の工夫を加える
和室が使える場合
和室はリラクセーションを実施するには非常に使い勝手の良い会場です。
椅子を置くと畳が傷むので、椅子に座っての方法が実施できないというデメリットはあるでしょうか。
会議室タイプの硬い床
体育館の床のような硬さの部屋があります。
この場合には、床にうつ伏せの態勢をとることが困難です。
もしそれでもうつ伏せになるならば、マットを準備する必要があります。
本格的なマットは一枚1万円以上するため現実的ではないとお感じになられるでしょう。
その場合、ホームセンターで販売されているようなマットを使用した経験があります。
ちょうど子供がいるお宅で遊び場に使われているような、柔らかいマットです。
30枚ほど購入してみてはどうでしょう。下記は茶色ですが、もっとリラックスにふさわしい色が見つかるかもしれません。
この場合、準備に労力を要します。また、保管場所にも苦労することになります。
また、会議室に机が所狭しと並んでいたらどうでしょう。
リラックスするのですから、もし机を並べたままにするにせよ、少しは空間をゆったりもたせたいものです。
また、本格的に机を片付ける場合、一人の力では大変な事です。しかしながら忙しい現場において誰かに手伝ってもらえるのかどうか、これは難しい所です。
柔らかい床の部屋もある
同じ会議室でも、柔らかい床で仕上がっている部屋があります。カーペットが敷いてあるようなタイプです。
この部屋では、マットはなくとも実施可能です。
その際、シーツやブルーシートなどで床を覆えば衛生面はクリアできます。
上記写真のような部屋ならば、一人で設営も可能かもしれません。しかし無理はしない事です。
椅子の形状
リラクセーションを実施する際、椅子を利用するならば、椅子の選定によってもリラックス度と関係する可能性があります。
例えば、10分程椅子にもたれ掛かってリラックスするような場合、その椅子の足が不安定でグラグラするのはいかがなものでしょう。あまり贅沢は言えませんが、なるべく新しい椅子を揃えたいものです。ましてや、椅子の錆がささくれのようになって擦り傷を負ってしまうようなことは避けなければなりません。これはリラックスとは真逆の体験になります。
背もたれの無い椅子
この対応の椅子は重宝されます。例えば、ペアリラクセーションで肩を弛めようとしたとき、背もたれやアームがあると動きが取りにくくなってしまいます。
ネームプレート
参加者同士が名前を知っているなら必要ありませんが、ペアになった人をなんと呼べばいいのかわからない状況を避けるため、名字程度わかるしておくのはどうでしょうか。
その場合、大げさなネームプレートを作るのも悪くはないですが、体も動かすため、実際的にはガムテープのようなものに直接文字を書いて、貼り付ける方法があります。
あまり美しくない、と抵抗を覚える人もあるかもしれませんので、運営者側の好みになります。
組織内で見知った者同士であれば不要です。
第6話:振り返りシートを活用してまとめる
こちらは第6話です。
概ね、Aさんの実施したプログラムは、好評だったようです。想像した通り、それぞれの部署の都合を尊重できる方式であったことが受けたようです。この方式なら、またやってみたいとの声が挙がったほどだったそうです。
Aさん自身が大変だったのではなかと思われがちですが、Aさんとしてもそれほど無茶なスケジュールの変更や組み方をする必要はありませんでした。 2時間ほどの勉強会になるとどうしても、都合をつけることが難しくなってきますが、15分単位などの場合には、回数は多くとも、比較的やりやすかったのです。
どうしても都合があわない場合には、また今度というくらいにしていました。結果的に、その方が実りがあったようです。
さて、この勉強会ですが、可能な限りで、勉強会の振り返りを実施し、その内容を記録してきました。副院長への報告もありまあすが、参加者がどのよう体験をしていたかという点をまとめることは重要であると感じていたのです。 非常に簡単なシートではありましたが、結果をまとめて、参加者にフィードバックまでをワンセットにしたのです。内容は下記の通りです。
シートの内容
本日はお忙しいところ、よくご参加下さいました。本日の内容を振り返る、下記の項目への回答をお願いしております。勉強会の終わりに回収致します。集計の結果は、個人が特定されない形にまとめ、後日フィードバック致します。
1.この一月の間、ストレスをどのくらい感じていました?下記の十段階の中で、最もあてはまる場所を〇で囲んでください。
あまり感じなかった 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 非常に強く感じた
2.ストレスが続くと、体はどのようになりますか?
・肩が凝る ・頭が痛くなる ・皮膚が荒れる ・血圧が上がる・その他( )
3.肩や首、肩甲骨、足などの中で、緊張していると感じる場所がありますか?・
ある→(部位をご記入ください )・ない ・わからない
4.本日の勉強会を終えて、いまの体の感じはいかがですか?
5.現在のリラックス感はいかがですか?以下の3つの中から一つご回答ください。
1.大変リラックスしている 2.リラックスしている 3.変わりない
振り返りシートは以上です。
結果の集計と、フィードバック方法
上記のようなシートを数量的にまとめ、それを別紙にまとめ、後日配布するという方法を取りました。しかし、細かい文字ばかりのまとめ方では、読むのも一苦労かと思い、そこでもまた一つの工夫が必要であろうことを考えたのでした。 Aさんは、どのような形式でまとめたのでしょう。
第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第7話です。振り返りシートの結果をまとめると、いろいろなデータが集まってきます。もともと複雑なシートではありませんでしたが、どのように結果をまとめるかによってフィードバックの印象は異なります。
集計のまとめは図や写真を中心にわかりやすさを重視した
今回は、シンプルに、図やグラフをメインにしたまとめ方をしようと決めました。細々とした文字を並べても読んでもらえる確率も下がり、それでは何のためにまとめを行ったのかわかりません。 写真を見て、当日に行ったことを想起してもらえるだけでも意味があるだろうと考えたのでした。それほどに医療現場は忙しく、また、多くの資料で埋もれているのでした。
まとめ方について
非常にあっさりとした文面でした。もう少し、表現や記載内容は推敲する必要があるでしょう。しかし、Aさんは概ねこのようなまとめ書きを配布することにしたのでした。反応は上々だったようです。副院長に報告する際にも、このフォーマットを一部使用することにしました。
また、この勉強会は何度も行っているため、その都度集計をまとめると、まとめ書きは結構なボリュームになっていきました。 毎回、所要時間や実施内容が異なるので、表現される感想や結果も微妙に異なる点は興味深い物でもありました。より意味のある方式での開催方法への示唆を与えてくれる資料にもなったのです。
第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第8話です。 Aさんの職場内におけるストレスマネジメントの取り組みは、半年を越えて行きました。副院長も、何やら興味深く見守ってくれているようでした。
現場職員からもっと勉強したいとの声があがる
この半年間で、Aさんの企画した勉強会に参加した人数は、150名ほどとなりました。全職員が1000名ほどの職場ですから、草の根活動で1/10以上の職員に、リラクセーションを体験してもらったことになります。 Aさんとしては、このままの調子で、継続していこうと考えていたのです。
あるお昼休みの事でした。 そんなAさんのもとへ、二人の職員が尋ねて来たのでした・・・何の話でしょう? もうちょっと本格的にやって欲しいのですが・・・ 二人の職員は、以前にAさんの勉強会に参加した方たちでした。
彼らが言うには、とてもいい経験になったので、もっと本格的な機会が欲しいとのことだったのです。 Aさんは、喜び感銘を受けました。しかし、もっと本格的に・・・とは、どのような形を想像したらよいのでしょう。 この話はひとまず保留とし、後日必ず連絡することを約束しました。 これをきっかけに、新たな形を模索することとなったAさんでした。
新たなステージへ
自発的これまでの活動は、とにかく職員に新たな負担がかからないようにと、シンプルなものを心がけてきました。 ですが、より深いリラックス感など探求するのであれば、時間を長くしたり、様々なリラックス法を色々と体験できる形も考えられます。 これまでのコンセプトは大事にしつつも、別枠で、定例開催方式もありかな・・・などと考え出したのでした。
自発性
何よりAさんが注目したことは、この申し出が副院長からでもなく、誰から促されたわけでもなく、勉強会に参加した当事者からのものであったことです。 そこには強い自発性を感じていました。 強制された研修は実りに繋がらないことがあると考えていましたから、逆に自発的な提案は意味を感じるわけです。
つまり発起人主体の会として、Aさん自身は、講師と言う立場で参加することにしたのです。 大げさに言うと、職場内に、ストレスマネジメント研究会が発足することになったのです。 どのような名称で活動するかなど、これは、もう少しふさわしい名前を考えなければなりません。こうしたところから、メンバーで決めてこじんまりとスタートすることにしたのです。
このときAさんには、グループで継続していくことに一抹の不安がありました。 その点が、グループ開催成功のカギとなると直感的に感じていたのでした。
第9話:収拾のつかない会議
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第9話です。Aさんには研究会を立ち上げる上で、様々な不安が去来しました。その一つが会議です。
会議に収拾がつかない
研究会にはいろいろな人が参加するかもしれません。
すると、何かを決めるには会議も必要になるものです。
ですが、その会議がうまく進むものでしょうか。
Aさんの経験上、会議時間は何時間にもわたることがあります。2時間の会議でもそれは大変な事です。
場合によっては深夜まで及んだ上に、早朝に再開する場合さえあります。
緊急事態であればそういうこともあるでしょう。しかしながら、そうでない場合であっても長引いてしまう事があるのです。
これには様々な要因が考えられます。
業務を圧迫
連日の会議は、本来の業務を圧迫します。
会議で遅くまで残った結果、スタッフが遅刻でもすることになったら散々な話しです。
それでは、ストレスマネジメントとは程遠い話なのです。
そもそも、連日の委員会に疲れてていた同僚たちがいたはずです。その再現になってしまってはいけません。
喧嘩が起きる
このような状態では、会員同士の葛藤も高まり、喧嘩になるかもしれません。
これには傷つく人もいるでしょうし、離れていく方もあるでしょう。
離れられればまだ良いのかもしれません、同じ緊張状態を共に味わい続ける仲間となる可能性があります。
自発的にやってきた人などは、真剣ですから我慢比べのごとく誰かが倒れるまで続くかもしれません。
もっと言えば、倒れてさえなお続くかもしれないのです。
これから、良さそうな事をはじめようとしているのに、こんな不安ばかりでもったいないようにも思います。
リスクばかり考える人とか、腰が重いとか、色々言われてしまいそうです。
しかしながら、これを考えずにして先に進んでしまうと非常に危険です。とりわけ、「ストレス」をテーマにするような会においては無視してはいけないと感じていました。
ファシリテーターの重要性
このような時、心理学を学んできたAさんは、ファシリテーターの重要性を思い起こしました。
ファシリテーターの役割は、その時間の安全を守ることにあると一つには言えると思います。
そう、研究会は安全な会にしたいという思いがあったのです。
実を言えば、会議の他にもAさんには様々な不安があったのです。例えば、技術的なことです。本格的な会となったら、Aさん求められる水準も高くなるのではないか・・・そんなプレッシャーも覚えていたのでした。
ポイントは心理的安全性にある
せっかく立ち上げた研究会も、お互い傷つけって罵り合って空中分解してしまっては残念な事です。ここにはある種、専門的と言って良いであろう、研究会運営の方法が必要となります。
それは、心理的安全性が鍵になります。
昨今、企業運営などの場面において「心理的安全性」という言葉を頻繁に聞くようになりました。
この概念と同一視してよいか、そこは検討の余地があるにしても、安全な勉強会であることには大いに賛成です。
これが、勉強会開催の成否を分けるところではないかと考えております。
心理的に安全な勉強会とは
勉強会、といえばどのようなことをイメージなされれるでしょうか。
私は、「〇〇さん意見はありませんか?」などと無茶な振られ方をされ、大勢の前で恥をかくことが第一に思い浮かびます。
実際にそのような経験を何度もしておりますので、そのダメージの深さについても熟知しています。
勉強会なのだから・・・という大義名分があるからなのでしょうか、配慮を感じない暴力的なやり取りを目にすることも少なくありません。
これでは、二度と参加などしたくなくなって当然ではないでしょうか。
参加者の経験値は人それぞれであることを考えれば尚更です。
ストレスケアの勉強会で安全性について気を付ける事
ストレスケアの勉強会が上記のような有様だったら散々です。
少なくとも、ストレスケアの勉強会ぐらいは別な手法、観点で、組み立ててみてはいかがなものかと思うのです。
安全性が配慮された時空間
カウンセリングの基本の一つは、その時間が安全な場であることです。カウンセリングを学んだ人は、それを知っています。
そのままとは異なるにしても、この感覚を勉強会に反映させたいところなのです。
批判の場ではない
例えば、勉強会は批判の場ではありません。
皆が、それぞれに助け合って学びを深めていく場所です。
あれこれと指摘する
指摘とは、はっきりした批判のことだけではありません。
ストレスケアの勉強会では、「あなたの肩はやたら硬いですね」などと指摘すると、悪気はないにしても、実はあまり心地よいものではありません。
「ご自分では、肩の辺りどうです?」
こちらの態度が安全性を高めます。
閉じる自由
もう一つには、なんでも共有できることが望ましいとは思えません。
人に知られたくない事、触れたくない思いが存在します。それはあって良い事なのです。
親密は良い事だと思いますが、親密にならない自由や、時間をかける自由を尊重すべきではないでしょうか。特に、無理やりこじ開けられた距離感の近さは、脅威と変わります。
蒸し返さない
上司や同僚も参加している勉強会では、その場がカンファレンス会場になってしまう可能性があります。
するといつの間にか、誰かがダメ出しの対象になっていたり、問題視されているのです。
「君の仕事の仕方が、この勉強会でも出ているよ!」
などという言葉が平気で飛び交ってしまうのです。
また、「あいつここぞとばかりに勝手な事ばかり言いやがって、これが終ったらとっちめてやるぞ・・・全部見てたからな!」などというのもいけません。
次回以降見張られている意識で参加する結果となるでしょう。
心理的安全性をさらに高めるには
上記のような事を気を付けていたとしても、実は日常的に我々は他者に脅威を与えているものです。その点を、それぞれが自覚することで、さらに安全性を高めることが可能になると思われます。
パーソナルスペース
例えば、わかりやすいところで物理的な距離感はどうでしょうか?これはコロナウイルスの感染対策時に嫌という程意識した、ソーシャルディスタンスでの体験が参考になります。
通常2メートル離れて会話するなどとされたわけですが、だからといって全員が安心していたわけではなく、逆にもっと近くても問題ないと感じていた人もいるわけです。
客観的基準などという言い方がありますが、それ以上に、雰囲気を読み取った距離感が必要と考えてみてはどうでしょうか。
視線の当て方
視線も相手に脅威を与えることがあります。特に日本人はその傾向が強いのではないでしょうか。そらすのもまた失礼にあたることがあるため、工夫が必要でしょう。
例えば、正面で向かい合って話すのではなく角度をつけて話すのはどうでしょう。
椅子に座ったグループワークでは、椅子を動かしやすいものとして、さらに空間を広くとることで安全性の高いポジションを一度ることが出来ます。
休憩などで時間を区切る
長丁場すぎる勉強会は、途中休憩時間を設けます。学校の授業なら1コマ50分程度です。大学なら90分ですが、これは長すぎるので60分にしようという運動が持ち上がっていました。
概ね1時間以内には休憩を挟みたいところです。
また、トイレなどはいつでも行けるような雰囲気が安全性を高めます。
タイムスケジュールの遵守
同様に、予定の大幅変更は大きな脅威と化すことがあります。
「1時間までは持つ」と心を構えていた人が、講師が話続けて休憩時間が削られたらイライラしてくるものです。不満も高まれば、恐怖を感じる人もあります。
さらには、研修に参加して一日を終えた時、不意打ちで「今日の宿はこちらで押さえてあります!安心して下さい。」などという展開が本当にあります。これは安心どころではありません。帰れないのです。どこに泊まるかくらいは自由にさせてもらえないと自由な意識が奪われ、安全性は損なわれるでしょう。
グループワークを行う場合には特に注意が必要
グループワークなどでは、特に主催者側の気持ちが前面に出過ぎて、参加者側に無理難題を吹っかけてしまっていることがあります。
「では、10分でこのことについてグループで話し合って発表してください。まず司会者を決めて下さい。」
これはかなりプレッシャーが高いものです。だいたい司会者を決めることに5分くらいかかって、話もそこそこに終わってしまい発表の時間となるのです。
司会者は運営側が準備してはどうかと思うのです。参加者の主体性を求めるという態度が言い訳になっている可能性があります。基本的に、主催者には「安全性を守り抜く管理人」という責務があります。
自己紹介には特に配慮を要する
温かい雰囲気の中で行われるやって良かったと思える自己紹介も確かにあります。これは主催者側の工夫次第で大きく印象が変わります。
一杯話したい人もいれば、一言ぼそっと終わらせたい人、むしろ紹介してもらいたい人とそれぞれいるものです。30年のベテランと新人が同じ研修に出ていたら、感じ方は異なるものです。名前を言うだけで精一杯な人もいますし、ベテランから見られているという意識もはたらくでしょう。
だいたいは、たくさんしゃべる人が基準のようになって、他の人がプレッシャーに感じる結果になります。
これを未然に防ぐには、「特に一言ない人は名前だけで結構ですし、もう少しお話になりたい人は1分位をめどにお願いします。」などというように枠付けをすることです。
参加者同士の経験値が異なるため、誰かが主導権を握ってしまう可能性がある
主導権を握ることまでは許容できたとしても、それが高圧的な態度であったら、心理的安全性は損なわれます。
全員平等な立場で研修に臨んでいるのですから、経験値の高い人のやり方にもっていかれていないかには注意が必要でしょう。優位な立場の者が高圧的に振る舞う事こそがパワハラの中核概念ではなかったでしょうか。まさかストレスケアの勉強会の中でそんなことを起こしてはなりません。
ポイントのまとめ
安全性を確保することは非常に重要であり、そして労力のかかるポイントでもあります。
ですが、これが成否を分けるので、後回しにできない所だと思います。
臨床心理士の立場からすると、心理的安全性を高めるにはエンカウンターグループなどにおける「ファシリテーター」としてのトレーニングをすることが役立つと感じました。
禁止令をたくさん作るということではなく、安全な雰囲気を高めることで様々なことが促進されていくわけです。
これらは対人援助職者が普段から実践している事ばかりですから、呑み込みも早いのではないかと思います。
ライブ方式でのストレスケア法提示はPowerPointより伝わるが、密かにでも練習をしてはどうか
安全な時間が過ごせるだけでも十分であると感じる事もありますが、一応、技法を中心に告知などしているわけですから、実際のリラクセーション技法で目の前で変化を起こすことが求められます。
ライブ形式
実際にストレスケア方法を紹介する際、ライブ方式で行うことがあります。 つまり、その場で実際にリラクセーションを実施します。 これには、相当の修練を必要とするため、初心の場合は技法を少数に限定するなどの工夫を要するでしょう。
そして、ぶっつけ本番ではなく、何時間もリハーサルをする必要があります。
パワーポイントスライドなどでイメージを掴めるとは思いますが、どのように進めるものなのかを示すには、ライブ方式は優れています。 言葉や写真で説明しただけで、「はいどうぞ」と言っても、そう簡単に行くものではありません。
どのようにしたら、実際にリラックス感が得られるかを考えて進行を組み立てなければいけません。これは専門性と言えるでしょう。
動画コンテンツにするという方法もありますが、実は本質は動画でも伝わらないのです。
目の前で肩を弛める
具体的には、その場のどなたかの左肩を弛めるようなことを指します。 左右の方の様子を聞き、左肩を弛めることが決まったら、動作法などの技法を用います。 実際に、肩が弛むところまで到達する必要があります。
やはり事前に徹底的な練習が必要となる
カウンセリングの訓練にロールプレイがありますが、ここでもそのロールプレイと同様の訓練が意味を成します。 体は人によって身長も体重も異なりますので、できれば多くの人と訓練を行うことが望ましいでしょう。
まさしく、他の人に見られながらの状況は緊張するものです。企画者が講師を兼ねるならば、その内容を実際に運用できるレベルまで練習しておく必要性を感じます。 例えば、リラクセーション法を中核に据えた場合、本で読んだ知識だけでは、多くの成果は得られにくいと思います。
手順を覚える
事前に、何度も実施して、手順などは暗記しておく必要があります。これは信頼感にも関わります。もしライブ提示する人がちょこちょことカンニングペーパーのようなものを参照していたら、「こんなので大丈夫なのか・・・」と全体の士気に影響しないでしょうか。
少なくとも手順位は覚える必要があります。
本来は現場経験が必要
さらに言えば、本来は日々の臨床活動の中で、日常的にその方法を用いている必要があります。しかし、特に初心の人にとってこれは困難なことです。だからこそせめてもの練習は必要なのです。
また、ある人はリラックスできても、別な参加者はリラックスできなかったという差が生じる可能性もあります。 このような場合、何か工夫できる点がないのか、あるのか。 このように、最も時間をかけるべき準備は、技術面ではないかと思うのです。
しかし、実際、リラクセーションを本格的に学ぼうとすると、その手がかりがあまりに少ないことに気づかされると思います。 これをどうクリアするか、それもテーマとして良いぐらいの課題なのです。 日本全国を探せば、何らかの研修会にはありつけると思います。
実践するために勉強会に参加する、又は作る
運が良ければ、リラクセーションに関する勉強会が県内に存在することがあります。
近くはないかもしれませんが、2時間も移動すれば見つかるかもしれません。
このような機会は貴重です。参加者として参加するだけでも、実践的な経験の一部とできるでしょう。
その際、講師(ないしはファシリテーターとここでは読んでおきます)の進め方にも意識しておくと、自分で開催する場合の参考となります。
ペアリラクセーションであれば参加者と、リラクセーション法を実施し合うことになるでしょう。
それは、ほぼ実践の場と変わりありません。
仮に、2時間中、一時間は実施者側の役割であれば、それは1時間分の経験になります。
来月も参加すれば、2時間になります。この蓄積が15時間くらいになると、少し掴めてくるのではないかと思います。
このような機会がない場合は、気心の知れた仲間同士で勉強会を企画し練習する方法があります。
両方を併用すれば、倍速で、経験を積むことも可能です。
ここでも安全性を忘れない
自分自身の訓練の場においても、安全性への配慮は必須事項だと考えています。この安全性への配慮自体が、技法の上達の大半を占めていると言って過言ではありません。仲間同士で傷つけ合って、散々になる事がないようにお互いに気を付けることです。
広報・告知に関する工夫
職員研修を開催する場合の案内文のサンプルです。
ここにも工夫を加えることが肝心です。
職員研修の開催を知らせる案内文のサンプル
2015年×日
研修タイトル:「職場で使えるリラクセーション」
今回の研修は、臨床心理士の◇◇さんにご担当いただきます。
内容は下記の通り2部構成で行います。万障繰り合わせの上ご参加ください。
第1部 「ストレスについて」
10:00~12:00:ストレスに関する講義
前半は、パワーポイントを使っての講義になります。
12:00~13:00:休憩 お昼は各自でご準備下さい。
第2部 「漸進的筋弛緩法を使ったリラクセーション」
13:00~15:00:リラックスする具体的な方法の実技
(若干体を動かします。動きやすい服装でご参加下さい。会場に更衣室はありません。着替えを済ませてお集まりください。)
※実技も含みますので、なるべく途中退室や遅刻のないようにお願いいたします。
案内を作成する上での留意点
これは、もちろんごく一例であり、開催趣旨や対象によって文言を工夫しなければなりません。
例えばこの案内では、遅刻がないようにと書かれていますが、これは顰蹙を買う可能性があります。
職場内での研修はたいてい業務の合間を縫って忙しく参加する事が多いものですから、遅刻厳禁の様な文言は常識的には通っても、現場によってはモチベーションを削ぐだけの表現になってしまいます。
案内の段階からそれは研修会の成否に関係していると考えて推敲する必要があるでしょう。
もう一つ加えるならば、「着替え」に関わる文言です。例えば、アルバイト3時間、時給1200円という求人があったとします。これは中々の高時給です。
しかし、実際蓋を開けてみると、着替えや準備に要する時間が20分以上もあり、しかも勤務10分前までに集合などという場合があります。これでは、30分はサービスのようなものと感じなくもありません。
着替えなくても良いならば、そのまま参加できる方が負担は少なく済みますし、大げさにすればそれだけあとの片付けも大変になります。
その他の例
その他の案内例も、サンプルとして載せておきます。
サンプル1
これは、当オフィスで実際に使用した、一般市民対象勉強会の案内です。申し込み方法についての記載は、裏面のためここでは省略されています。
なるべく専門的な言い回しを避けているつもりですが、結局のところ文字数が多めです。
その他、結びに
長文コンテンツとなりました。
文章で全てが伝わるとは思えず、実際には実践しながら工夫を重ねていくことになると思います。
共通して言えることを挙げるならば、やはり安全性になります。
これは何度繰り返しても同じことを言いたいところです。
その他、様々なシンポジウムなども開催されています。これらも参考になると思います。病院の働き方についてのシンポジウムです。かなりつっこんだ話がなされています。
参考サイト:長崎大学 病院の働き方改革シンポジウム2021(株式会社ワークライフバランスより)