最終更新日 2024年11月13日
もし、我々一般人が漸進的筋弛緩法を学んだならば、どのような使い道があるのでしょうか。医師や臨床心理士は専門的な援助手段として用いるわけですが、一般人としてはそういう使い道とは別になります。
広く言えばセルフケアの方法ということになると思います。 例えば、心身の疲労を漸進的筋弛緩法を用いてセルフケアするとか、眠る前のリラックス方法に用いるとか、職場の休憩の合間にリフレッシュのために用いるとか、このような用途に集約されてくるでしょうか。 確かに、パソコンの連続使用で疲れたとき、何か体をほぐしたい様な気分になりますが、その場合肩を回すとか、散歩に出るとか、そのような方法になると思います。
そこで、漸進的筋弛緩法を知っている人は、これを使って体をほぐす手段も備えることになるわけです。
職場では周りに人がいるのでちょっと周囲から見られてる中ではやりにくいかもしれません。工夫が必要になってくるところだと思います。
臨床心理士の活動の一つには、このような方法を紹介し日々の生活に役立ててもらおうとするものがあります。
ジェイコブソンの漸進的筋弛緩法とは
漸進的筋弛緩法(プログレッシブ・リラクセーション:progressive relaxation)は、エドモンドジェイコブソン(E.Jcobson)によって考案されました。
ジェイコブソンは、アメリカ生まれの学者で、ハーヴァード大学などで緊張に関する研究を続けていました。 そして、1929年に「漸進的筋弛緩法」を記しました。
※ジェイコブソン(1888-1983)
取り入れられている現場・領域
漸進的筋弛緩法は非常に幅広い分野で活用されています。企業、学校、病院、スポーツ関係など主な目的は異なっても多分野で使われています。
病院の中では特に心療内科で使われる機会が多いと思います。一般の内科の先生も、専門ではありませんが、漸進的筋弛緩法を知っている人も多いように思います。
他に自律訓練法がありますが、どちらかと言えば、自律訓練法の方が知名度が高いという印象はあります。しかし実際的なところはわかりません。
病院内で行われるカウンセリングの中で用いられることも良くありますし、病院に限ったことではありません。
順番に緊張と弛緩を繰り返す方法
この方法は、体の筋肉を自発的に緊張させたり、弛緩させることを繰り返す方法です。漸進的とは、段階的にとか順番にと言った意味を持ちます。この方法が考案されたのは1920年代のことですから、かなり長い歴史を持つ方法です。 最近、このアプローチも見かけるようになり、導入されている場面が多くなってきていると感じています。
学校や職場でも活用の可能性は高い方法であると思います。見た目で理解しやすい方法ということも手伝っていると思います。 昨今ではNHKをはじめとしたテレビ番組で取り上げられる機会も目にします。(例えば、NHKの人気番組ためしてガッテンでは、ぐっすり睡眠わざ“筋弛緩(きんしかん)法として紹介されていました。)
ジェイコブソンの方法は、体の各部位の緊張に注目しているもので、足や手、顔等の緊張を自分で弛めて行く方法を体系的にまとめています。 何度かの練習を通して、セルフケアの方法とすることもあれば、集団で実施する場合もあります。
手順
手順については、ここでは触れられませんが専門家の指導を受ける方法や、研修会への参加などで学ぶ方法があります。
それほど複雑ではないため、集団で実施する場合もあるほどです。手や足、顔などの各部位について、自分で緊張と弛緩を繰り返し、リラクセーションを行う方法です。
※公開動画がありますので紹介いたします。もし動画を観てやってみようという方で、医師に運動を止められているとか、何か特別な制限があるような際には一度主治医にご相談なさってからの方が良いかと思います。またどなたでも途中で不調を感じた場合は中止してください。
その他、冨永良喜先生のチャンネルでも解説されています。日本ストレスマネジメント学会が、コロナに負けるな!みんなでストレスマネジメントというコンテンツを作成しており、その中で冨永先生の方法を紹介しています。
ラジオ体操やストレッチとの違いは
しかし、新しい方法をわざわざ覚えるくらいならば、ラジオ体操の方がいいと言う人もいると思います。この辺りが、ストレスマネジメントの難しいところでもあり、無理強いするわけにもいきません。 ラジオ体操でも心身のすっきり感が得られると思いますが、漸進的筋弛緩法はラジオ体操よりも心身のリラクセーションに向いているのでしょうか。
本当に使えそうなものなら使ってくれるというシビアさもあると思います。これは専門家側に求められている課題であると思います。 手順や方法を知りたいという場合は、専門的な研修会などへの参加があります。正式な方法ではなくとも、現在では簡略した方法が用いられることもあるようです。
運用する上での工夫など
漸進的筋弛緩法に関わらず、実際の場面では、工夫が求められることもあります。ほとんどの場合工夫が求められると言っては過言ではないのではないでしょうか。臨床心理学にも、様々な心理援助の理論が存在していますが、何もかも理論通りに進んでいくはずもないわけです。
これは心理援助の分野に限らず、他の分野においても同様のことが言えることもあるでしょう。通常は、理想的な動きを訓練していても、実際運用場面においては、状況によって工夫をすることになると言えないでしょうか。
実施場所の環境
例えば、ジェイコブソンの漸進的筋弛緩法の集団講習等の場面で、臨床心理士が要請された場合、一応の準備をして臨むことになりますが、講習の会場はフロアリングでしょうか、それとも横になっても構わない畳タイプの部屋でしょうか。
また講習を受ける人は、仕事を抜けて来るのでしょうか、遅刻して入ってきたり、業務の関係上途中で抜ける人はいないものでしょうか。 もし、椅子での体勢を基本に考えていたら、畳の部屋では椅子は用意されていないことになります。
かと言って正座や体育座りのような状態で、漸進的筋弛緩法は実施できるのでしょうか。 実際的には、このような点の検討も必要になっていきます。
まず、通常の講義室タイプの研修室であれば、好みもあると思いますが、比較的講義にも実技にも応用しやすい環境と言えそうです。 もし前半は講義、後半は実技というプログラムで進行する場合、講義終了後に、机を片付けて、スペースを確保できそうです。
また、床の硬さも、一時的に横になったり座ったりするには確認が必要です。カーペットが敷き詰められ柔らかい床ならば適していると言えるでしょう。さらに、参加者への配慮として、ブルーシート等で床を覆い、衛生面に留意する必要はあります。
次に、上記のような和室タイプの部屋が研修に利用されることがあります。 このタイプの部屋では、ブルーシートは必要なく、そのまま畳の上で実技研修を進められます。 実技に適している部屋が必ずしも講義を行う環境にも適しているとは限りません。
プロジェクターを使用するつもりの場合には、映像を映し出す場所の有無を考えなくてはいけません。人数にもよりますが、マイクが必要になる場合もあるでしょう。
事前アナウンス
参加者に予め案内を出すことが出来るならば、2,3のことを伝えられると良いのではないでしょうか。例えば、服装についてですが、可能な限り動きやすい服装が望ましいものです。その他何かあれば、案内の用紙に記載したいところです。