最終更新日 2024年12月3日
臨床心理士の専門性は大きく分けると、4つに分類されます。その中の一つに臨床心理的地域援助が挙げられます。
個別のカウンセリング(心理面接)では、個人を対象とすることがほとんどですが、臨床心理的地域援助では、学校、職場、地域などの単位を支援しようとします。地域などの単位を対象としたコンサルテーション活動という言い方もできるかと思います。
臨床心理的地域援助の例
例えば、ある職場に従事する臨床心理士が、職場の管理部門から職員のストレス状況の緩和を目指した相談を受けたとします。
こうした状況に対して、臨床心理士の専門性から何らかの支援ができないかと相談を受けたわけです。個人のカウンセリングではなく、職場全体へのアプローチをしてゆくもので、これは臨床心理的地域援助の活動に含まれると考えられます。
下記にも実際的な内容が掲載されています。
例えば・・・ストレス対処の講師
直接的な支援方法としては、リラクセーション法の講習会などを企画・開催するなどが考えられます。
リラクセーション法は、個別の面接の中でも用いられることがあり、その応用で一般社員にも役立ててもらえる可能性があるものです。例えば、自律訓練法や、漸進的筋弛緩法を背景に、講習のプログラムを練ることが可能です。
このような実践を通して、従業員の間で、「パソコンで疲れた時は講習で覚えたリラックス法を試してみることにしている」、などという変化が得られるかも知れないわけです。この例では臨床心理士が担当していますが、看護師や保健師が担当していても不思議な内容ではありません。
その他、コンサルテーションに徹するというやり方もあれば、講師と合わせて同時進行的にコンサルテーションを継続する方法もあるでしょう。
新人研修を心理的視点から担当
また、上記とは別な対象へのアプローチで新人研修を担当するなども一つの方法となるでしょう。
この場合、組織自体が企画している新人研修という大枠の中の一コマを心理士が担当するという場面が考えられます。
新人研修では、社内規則や、労働法規に関すること等幅広い研修が行われることがあります。
その中にはストレスチェックや、職員のメンタルヘルスに関することも含まれるでしょう。これらは臨床心理士とも縁が深そうです。
しかしながら、これらは説明的な活動となりますので、「ワーク」、「グーループワーク」を取り入れる臨床心理士もいます。
そのワークの方法は様々です。フォーカシング的な方法を活用する人もいれば、エンカウンターグーループのような形式をとる人もあるでしょう。
講師登録する人もいる
このような活動は、「社内」のような組織に限らず、まさに「地域」とか「コミュニティ」を対象に行われることもあります。
生涯学習講師や市民講師を募集している自治体があります。
私も、臨床心理士として千葉県の運営するサイトに講師登録をしています。これは臨床心理的地域援助の一環と言えるでしょう。
数々の活動が成されている
その他、数々の活動がなされています。先ほどの例は職場のストレスでしたが、他にも職員研修の担当、子育ての支援の関係グループワークや講師役、就労支援現場や他専門職への講師役など多様な活動があります。
心理臨床学会特設ホームページにおいても、その実践を確認することが出来ます。(上記に示したリンク先です)
災害が起きた時、我々の専門性からも何かお手伝いできることがあるように思います。或いは、社会からの要請が発生します。そのような時、個別の心理援助の蓄積は意味を成します。そのままを応用することもあれば、創意工夫を加え、個別以外の支援方法とすることもあります。
その他の関連資料
その他、臨床心理的地域援助に関連する資料を集めました。
- 臨床心理的地域援助の教育・訓練について(広島大学学術リポジトリより)
- 放送大学授業案内:「臨床心理地域援助特論(’21)」大学院科目(ラジオ授業科目案内
- 乳幼児期子育て支援の現状と課題:臨床心理学的地域援助の実践に向けて(九州大学学術情報リポジトリ)
- フィクションですが、臨場感ある物語です「医療従者を対象とした実践例」
意味のある活動をしなければならない
どうにかこうにかでもやらざるを得ないという目の前の現実があるにしても、臨床心理的地域援助の実際は、難しい所もあると思います。
個別の臨床経験はされを支えるものとなるはずです。それを抜きにしては語れないものではないかと思っています。
支援を急ぐ時、気持ちばかりが焦るものですが返って迷惑をかけてしまうことがあります。いわば倫理観に関することになりますが、この感覚を養わないままには活動できないものです。
当オフィスにおいても勉強会等を開催することがありますが、やはりそれは普段の活動から蓄積されたことを土台にしています。
※支援のつもりが逆に負担を増やしてしまう事もありますから、よく考えて行動しなければなりません。
当オフィスでも、実践準備をしています
これは当オフィスなりの臨床心理的地域援助の一つの形です。
カウンセリングの実践が先であり、地域援助はその結晶としてあるように書いておりますが、ある段階まで来ると、逆に地域援助の経験が、日々のカウンセリングに良い意味で還元されはじめます。
当オフィスのカウンセリングには、地域援助の活動から得られたことも反映させているのです。
まとめ
日々現場でカウンセリングにあたっている臨床家とスタイルとは別なものに見えるかもしれませんが、やはりそこには連続性があると思います。
逆に言えば、まったく別な物を繋ぎ合わせるのではなく、臨床家には一貫した態度が求められるように思うところです。
上にも述べたように、臨床家に不遜な態度があっても支援というよりは害をもたらす結果になりかねません。
つまりは、日々の臨床経験が、地域援助の場でも行かされるという事を意味しています。