最終更新日 2024年12月29日
心理臨床家による援助は、多くの場合言語を通して行われます。カウンセラーが質問を投げかけたり、話を要約したり、相談者側が、何かについて話を進めたりと、概ねこのような様子が一般的です。
また、多くの人のイメージは、言語によるカウンセリングのイメージだと思います。その他には、催眠や寝椅子に横たわった精神分析がイメージにあるように思います。
実は、カウンセリングの中で、絵や、箱庭が登場することもあれば、動作や体に注目する方法もあります。こうしたイメージはあまり持たれていないように感じます。
臨床動作法とは
例えば、臨床動作法という心理援助の方法があります。動作法では、肩や肩甲骨の緊張が話題になることもあります。カウンセリングで、なぜ肩甲骨なのかと、イメージのつかない方もいることでしょう。
詳述はしませんが、言語のカウンセリングも、動作法も、根本的には同じことを行っているのだと思います。その手段が、言語を媒介とするか、動作を媒介とするかの違いであり、どちらも、人間の生活に密接なものと言えるでしょう。
また、決して体の専門家ということではなく、言うとすれば、「体験を扱う」ことを専門としていると考えた方が分かり易いと思います。
動作を通しての、動作体験等に、フォーカスした援助を展開していくものです。
「体験」という響きからは、心理援助寄りの事を想像していただけるのではないでしょうか。体験とは、存在感や自体感、主動感などのことを指しています。
特に、臨床動作法では、体験様式(ないしは様式)に注目します。
そして臨床動作法は、成瀬悟策によって創始された日本オリジナルの心理療法と言えます。(日本におけるカウンセリングの歴史もご参照下さい。)
動作法の他にも、自律訓練法がよく知られています。自律訓練法の方が、歴史は長く、ドイツのシュルツ博士が考案した方法です。
日本でも取り入れられており、特に心療内科領域で用いられます。その他、職員のメンタルヘルス研修などにも紹介されることがあります。
臨床動作法の展開
元々は、脳性麻痺児の動作改善からスタートしました。様々な取り組みを経てその領域は拡大し、心療内科領域や職場のメンタルヘルス、健康増進などにも活用されるようになりました。
課題努力法
臨床動作法を学ぶ過程で出会う方法論のことである。動作法では、「動作」を主たる主たる援助手段とするが、それは援助者が一方的に、動作させることではない。
課題努力法では、援助者側が提示した動作課題(腕を挙げるなど)へ、被援助者が取り組む。そしてその課題を達成しようとする。援助者は、その課題達成の努力過程を支援するのである。こうしたことを指して課題努力法と呼んでいる。そして、心理援助上の意義は、課題を達成しようと努力する過程での「体験」にあると考えられている。
※ここで言う「努力」とは、日常生活中で用いられる努力とは異なる意味をもっている。動作法では、身体運動が生起する際に、「意図」と「努力」の過程を想定している。
まず、課題とは何かを考えると、肩を挙げるとか、肩の力を抜くなどのことを指す。特に動作法では、セッション体験を重視しているため、宿題の様な課題提示の方法を取らないことが一般的である。
動作法でよく用いられる課題
動作法では、伏臥位・立位、仰臥位などで動作課題が作られていく。例えば、座った状態で、肩や肩甲骨周りを動かし、弛める課題などが挙げられる。
しかしながら、この課題も文章で書くほど、簡単ではない。自分自身の体の感じへ意識を向ける経験は、日常ではそれほど多いものではなく、肩や肩甲骨の位置を意識することさえ困難を覚える人もあるはずである。
何度か課題達成に向けた努力を繰り返す中で、徐々に体の感じへ意識が向いていくようである。
どのようにそれに努力して何を体験してか
課題努力法の中で、最も重要になることは、やはりセッション体験であろう。その課題へ取り組む中で、どのような体験がなされたかということが重要である。
そのため、肩がどのくらい挙がるようになったか、肩の凝りがほぐれたか、確かにこれらのことも重要なのだが、主題はこれらでなく、どのような体験をしたかという方になる。
肩や肩甲骨周りの課題では、自体を意識する体験をするかもしれない。また、緊張が和らぎ、リラックスしたという体験をすることもあるだろう。
逆に、無理に力を入れすぎたりして、痛みが生じたため苦痛を体験してしまう可能性もある。課題を提示した援助者側は、よりよい体験ができるように、援助していく役割であり、課題提示の内容にも工夫が必要である。
課題努力法は動作法以外の心理援助を用いる際にも、この視点は大いに意味を成すと考えられる。例えば、言語のカウンセリングでも、質問をCLに投げかける時、それは、質問の答えを探そうとする努力過程があるように感じている。
またカウンセリングの中で「努力の様式」に意識が向くことはよくあることである。
セッション体験重視
宿題を出すことと対極的で授業重視のように、動作法セッションのその場での体験を重視します。
実際的な活用
これらの方法は、動作や自律訓練法単独で行われることもあれば、言語と併用的に用いられる場合もあります。
この他にも、ダンスやコラージュ、内観等、多様な心理援助の方法が存在しています。
当オフィスのカウンセリングでは、なるべく臨機応変的な援助を心がけておりますが、現在のところ、ほぼ言語での面接主体になっております。
まとめ
臨床動作法による心理面接は、一般的にイメージされる心理カウンセリングのイメージとは異なり、概ねお互いソファーに腰かけて対話を繰り返す形ではありません。
動作法に限らず、様々な形のアプローチ法があります。
- 関連ページ:カウンセリングにはたくさんの種類がある