ブログ著者:臨床心理士 松田卓也

最終更新日:2025年11月06日

カウンセリングの効果とは

一体何が起きているのか

大きな疑問の一つに、カウンセリングを行うとどうなるのか?というものがあると思います。これは、いわゆる効果に該当する疑問です。(ここでは便宜上効果という表現を用いますが、医療行為を行うものではありませんし、何らかの疾患に対する効果という意味でもありません。)

カウンセリングの効果とは

もう少し言えば、カウンセリングはどのように行われ、その結果何が起きるのかということです。この点について、ここでは触れたいと思います。あるカウンセラーの場合というぐらいにお考えください。カウンセラーにより考え方の違いがあります。

まず、カウンセリングを行う環境について述べると、基本的にカウンセラーとクライエントの1対1で行われます。

部屋は、どこでも良いわけではなく、基本的には専用のカウンセリングルーム(面接室)の中で行われます。

そして、時間はあらかじめ決まっています。例えば、60分で1回行われます。

初回カウンセリングと、2回目以降で様子が異なることがありますが、1回目からは始まっている場合があります。ここでは、1回目からはじまっている場合とお考えください。(初回では、面接をはじめる前に、多少の住所記入や、カウンセリングに関する説明などがあるでしょう。)

このような構造の中で、カウンセリングは開始されていきます。

学術的な動向からの効果の捉え方はどうなっているのか

話を進める前に、学術的な動向に焦点化しておきます。

もちろん、心理療法、カウンセリングに関する効果研究は遥か以前からなされてきました。

ドードー鳥評決

ドードーバード仮説

ドードー鳥は既に絶滅した鳥のことです。しかし、不思議の国のアリスには、作品の中で登場します。そこで、鳥たちの競争が行われ、誰が一番だったのかわからない結果となります。

心理療法もそうだというのが、このドードー鳥評決のことです。

数多くの心理療法が存在する中で、要するに、皆いいというようなことを言っています。全てに対して全てが良いということではなく、うまくいったことについて、皆それぞれいいという意味として受け取りました。

日本人でいうところの、金子みすゞのような捉え方です。

原著論文:Rosenzweig, S.(1936)Some implicit common factors in diverse methods of psychotherapy: “at last the Dodo said,
‘Everybody has won and all must have prizes.’”American Journal of Orthopsychiatry, 6, 412-415.

このRosenzweig, S.(1936)の論文を皮切りに、効果に関する検討が重ねられていったというということになります。

日本心理学会に言及があります:(2011年) 54号 イロイロ知りたい!心理学史 第4回 心理療法の効果と不思議の国のアリス ドードー鳥が訴えること (※PDFです。)

何が行われているのか

さて学術的動向は、徐々に書き足すことにします。さらに個別な内容に入ります。

まず、多くの場合カウンセリングは言語を媒介にして行われます。そして、その言語による方法にもいくつか種類があります。例えば、ロジャーズのカウンセリング、ソリューション・フォーカスト・アプローチ、ナラティブ・アプローチなど、名称も様々です。逆に動作法などは、ほとんど言語を用いません。

言語面接の場合、カウンセラーは、あまり口数が多くはありません。時に、質問を挟むこともあります。詳しくはカウンセリングにはたくさんの種類があると下記をご参照下さい。

 

カウンセリング後に何が起きるのか

面接中に起きることと、カウンセリング後におきることを分けて記述します。

面接中におきること

面接中には、クライエントは、日常の価値観から離脱し、自分自身の自由な語りを展開していきます。(面接中は、大小ありますが、このようなことが起きてきます。)

そして、カウンセラーの質問などを受けながら、自分の進みたい方向性を明確にしていきます。つまり、クライエントはそもそも、自分の中に、その問題について、どのようにしていきたいかということを何となく意識しています。しかし、それはまだはっきりとはしていない状態でカウンセリングに訪れます。

この曖昧な感覚が、心理面接を経て明確になっていくことがあります。

つまり、カウンセリングの効果として自分に意識が向きやすくなるということが一つ言えるかと思います。必ずしも言い切れないことがその定義する難しさでもあります。

カウンセリング後に起きる事

面接後に、クライエントは日常生活に戻っていきます。そこでは、様々な人との交流や、生活の中で様々な体験が起きます。それらの体験を経る中で、日常生活がより本人にとって望ましいと考える方向に進んでいきます。(バラ色の人生という意味ではありません。)

適切な対人距離が生まれることもある

少し、具体的に言えば、例えば、職場の人間関係に悩んでいた人が、ある人と距離を取り始めるとか、笑ってやり過ごすなどの変化が生じてきます。つまり、ここにはカウンセリングの中で、本人が、あの人と深く付き合いたくないということを意識化したことも関係してくるわけです。

嫌であることを自覚し、嫌であるという気持ちを自ら肯定した結果と捉えることもできるでしょうか。

自分の気持ちを明確にしたことで、その人との付き合い方に変化が生じたとも言えるでしょう。これは、

カウンセリングの時間が直接的に影響するというよりは、後の日常生活を通してと言った方がより適切でしょう。

意思決定が進むこともある

自己決定が進むということもあります。例えば転職を決めたとか、辞めないことに決めたなどと自分の意志を決めて行くことです。

その他、答えは出なかったが、何かが磨かれ力が付いたというような場合もあり得ます。

何が変化したのかという疑問への一つの答え方としては、我々は「体験様式」が変わると応えることにしています。しかしこれは馴染みのない言葉のため説明には適さないかもしれません。

※政府系の専門サイトにも効果に関する記述がありました。

まとめ

先に述べたように、このように書いてまとめたとしても、だが・・・とか、実はとか・・・その他にはなどと幾つも幾つも例がとは言えない程の、別な場合が存在します。

個人個人で違うと言ってしまいたくなるほどです。

「何かよかった・・・」くらいのセリフの方が、効果をより正確にあらわしているかもしれません。