令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果概要から見るストレス状況

労働安全調査

最終更新日 2025年6月12日

令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要が発表されています。

それによると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安・悩み・ストレスを感じている事柄がある労働者は82.7%でした。

このストレス状況にはどのような背景事情があるのでしょう。

令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要から読み取れること

割合の円です

就業形態別では、正規社員が全体よりも高い、86.1%でした。

そして、就業形態別に見た強い不安、不安、ストレスの内容別労働者割合(主なもの3つ以内)が示されています。

下記がそれらを元に作成したグラフ・表です。(正規職員の場合)

就業形態別に見た強い不安、不安、ストレスの内容別労働者割合

実態調査を表にした

失敗、責任の発生等が42.9%、仕事の量が41.2%と、多く回答されています。

失敗や責任を責められるのは多くの人がしている事だと思います。

責められれば尚更に悪循環を生みそうなものですが、なかなか職場というのは寛容ではありません。昨今心理的安全性のある職場なることが言われはじめてはいますが、社会全体の雰囲気からも徹底的に責任を問う空気があると感じる方は多い事でしょう。

こうした調査を毎年追っていくと仕事の悩みに関する社会の動向を推測することに役立つでしょう。

形態別の違い

形態別にまとめたもの

数値を読み取る人用

こちらは、就業形態別にまとめたグラフです。それぞれ、正規社員、契約社員、パートタイム労働者、派遣社員を示しています。

棒グラフにも数値は示してありますが、読み取りにくい部分は下の表をご参照下さい。

一度に、就業形態別の比較ができます。

目立つのは、雇用の安定性です。正規社員では4.2%と少数ですが、他では29~38%で8倍ほどです。

こうした結果の概要が示されていました。

では、現代社会の労働者を取り囲む背景にはどのようなことがあるのでしょう。また、どのような出来事が直接的に労働者は直面するのでしょう。

労働人口の減少による業務負担の増

これは個人レベルの話ではありませんが、少子高齢化社会においては労働人口の減少が社会問題と化しています。上の示された「仕事の量」の背景事情の一つと言えるものでしょう。

どこも人手不足のようです。そのため人知れず負担が集中している人もいるのでしょう。

昨今のこの忙しさは、目まぐるしく変化する社会に起因している可能性があります。

若い人にその負担が集中しているのではないかと危惧もされています。

ある研究によれば、ストレスは末端に集まるとされています。かつて中間管理職のストレスが注目されましたが、どうやら末端らしいのです。

職場では介護離職という言葉も聞かれるようになりました。

なぜ介護がここに関係するかといえば、労働人口の減少に少子高齢化が密接に関係しているためです。介護離職という言葉さえ生まれました。

会社でよく聞かれるセリフ

会社の上司
会社の上司
残業はしないでください。持ち帰っての仕事も禁止しています。計画的に業務を完遂できるよう進めてください。

しかし、決して業務量が減らされることはないのです。これまでの隙間時間などを削減して効率化したに過ぎないことも多々ある模様です。そしてとどめの一言が、あれです。

会社の上司
会社の上司
決してしくじるなよ!

たくさん仕事があるのは良い事ではないのか

仕事がたくさんと言う事は、経営視点から見れば繁盛ということですが、そう単純ではないことです。

以前は10人で行っていた量を6人で担っているかも知れません。

教員の世界では欠員が埋まらないという報道がされていました。

これは人が集められないと言う事の他、業務を合理化したためという可能性もないでしょうか。上に挙げたように、残業はカットしても業務量が同じままであれば、量自体は増えていなくとも、増えたようなものだと体感されるわけです。

ますます緊張感は高まります。

そして、合理化とは経営においてかなり優先事項のように思います。

景気が悪くなれば、ギリギリの人員で現場を回したくなるものではないでしょうか。

これらが総合的に作用していることを考えると、日本人は限界を越えた働き方を強いられているのではないかと心配になってきます。

予てより、栄養剤を飲んで働くという国民性が合ったことを思い出します。

休職者が増えた

また様々な背景はありますが、ある時から全国的に休職者が増えました。メンタルクリニックが急増した時期とほぼ重なるように増えました。企業側も復職プログラムを取り入れる等整備が進められています。

また、同様の厚生労働省の調査によれば、「過去1年間(令和3年11月1日から令和4年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連 続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%」(参考元:令和4年労働安全衛生調査の概要)とのデータもあります。

せっかく就職はしたけれど・・・何か違った

しっくりこない

新しい生活に胸躍らせる人も多い事でしょう。

社会人初期には特に、考えていたことと実際とでギャップを感じることもあります。

退職の背景にはこのような理由も挙げられます。同時に、これを前向きに捉えられることもまたよくあることです。

プロジェクト

ついてきなさい

時に、大きな仕事を担当することになる人もいることでしょう。仕事の大小ということをどのように区分けすることが妥当であるかわかりませんが、その人にとっての一世一代の仕事を任されるような場面です。

これはチャンスでもあり、プレッシャーでもあります。

 異動

荷物整理

これは上に示した実態調査結果にも登場しました。役割・地位等の変化です。

せっかく慣れた、または充実してきた仕事であっても、時には職場の事情で担当が変わったり、部署を異動しなければならないこともあります。

また新しい環境に慣れるまで時間も必要となると考えられますし、何のための異動なのかわからないという疑問を感じる人もいると思います。組織によっては,直前まで知らされる、引き継ぎ時間も短く、どこか他の部署で全く違うタイプの仕事をしなくてはならないこともあるようです。

目まぐるしく変わる制度や環境

現代社会は非常に加速しています。10年前に使っていたパソコンにはなかった機能に驚かされ勉強し直した方もいることでしょう。余計に使いにくくされているようにも思います。

また法律が出来れば義務も増えて管理することも山盛りになっていきます。

ストレスチェックの実施も義務化された

昨今は、健康検診のように、従業員へのストレスチェックの実施が法律によって義務付けられました。仕事にまつわるストレスは、業務の量や内容などに関する負荷から、対人関係上の事まで様々なことを含んでいます。

各種コンプライアンス

この10年だけとっても、様々な法律が制定されました。これは労働にも大きく影響します。

法律が変わると、世のなかが一変する事さえあるものです。昨日までの常識が覆されることもあります。ある時から日本中が残業削減に非常に熱心になりました。

コンプライアンスは、概ね世の中を良くしようとする働きがあると信じたいですが、様々な軋轢やプレッシャーを生み出している事実はないでしょうか?

社内恋愛が減っていると聞きますが、その背景にはセクハラ意識の高まりがあるとする意見があります。加害者として見られてしまうという恐怖が社内恋愛を減らしているのだそうです。

IT化が進んだためとも見えますが、コンプライアンスが一役買っている可能性はありそうだと思います。

人間関係

これが一番の悩み事かもしれません。パート、常勤、派遣などに関わらずどこにでも存在する悩みです。言い辛いこともあるでしょう。

働くこととは

名言

考えれば考えるほど、いろいろなことが浮かび上がってくるようであります。

最後に触れてみたいことに、仕事の疲れに関することがあります。

当然、一日働くと疲れが出ますが、その疲れには種類があるのではないかと思います。ここで触れるまでもなく、働いている人は経験なさっている事かと思いますが、疲れたけれど何か心地よさが残る疲れというものが存在するように思います。

それは仕事が終わったという達成感や充実感を伴うようなものなのかもしれません。

ここには非常に個々人の違いがあると思います。ある人は、まさに給料を得たというそのことが達成感となるかもしれませんし、家族のために働ききった自分ということに誇りを感じている人もいると思います。

または、仕事で結果を出したという、自分の能力への自信のようなことを感じている人もいるのではないでしょうか。

悩みは尽きないけれど、きっと働くことは楽しい、と感じた経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

まとめ

読んでいるだけでも眩暈がしてしまうような背景事情が垣間見えます。
こうした背景事情がある中で、どう働き、生きていくのか、いやそんな風に捉える事こそが力み過ぎることに繋がるのだと言う方もあるでしょう。
それぞれのスタンスがあって良いだと思います。