残業さえ減れば、うつ病がなくなるわけではない

ブログ著者:臨床心理士 松田卓也

早く帰りなさい ストレス・メンタルヘルス全般

働き方改革の成果もあってか、残業時間に関する意識はかつてより高まったように思います。

しかしながら、とにかく残業が減り、労働時間が管理されればうつ病は減るのかというと、そう単純ではない模様です。

労働時間は数値で管理しやすく、手を付けやすい対策ではあると思いますが、働いている人間が、本当に生き生きしていられる労働環境が非常に重要なのではないでしょうか。

数値では示されないことも多い領域があると思います。

皆もうわかってはいるのだと思います。

働く人における、残業時間以外のうつ病の背景事情

そもそも、働くこととは楽しいことだったのではなかったでしょうか。

楽しいというのは、もちろん愉快という意味ではなく、満足感や何かを成し遂げ、貢献したような、様々な体験が詰まっている営みであったように思います。

いつしか、それが様々に分解されたり、抽出されたり、詰め詰めになったりと、元々の働くというところから段々と別なものになってきてはいないかということを思うわけです。

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一仕事終えた後のお昼ご飯は無条件においしかった

こんな経験をしたことがあると思います。

なにかの作業、芋ほりでもなんでもいいのですが、何か健全な作業を終えた後のような時です。山登りでもピクニックでも近いことが起きます。

その後に食べたなんのへんてつもない蕎麦やおにぎりが格別においしかったというたぐいのものです。

究極のメニュー

 

動いて疲れているはずですが、そこにはどこか心地よさがあり食事も普段とは比べ物にならないものとなります。

これが労働の原型なのではなかったでしょうか。

現代社会においては、朝からパソコンに向かい続けて4時間・・・確かにお昼は食べたいが・・・体なんてまるでうごかしてないぞ・・・と微妙な感じなってはいないでしょうか。

さて、ここからは、労働時間以外の要因について触れていきます。

不規則勤務

不規則勤務を経験したことがある人は、想像しやすい話かもしれません。

医療現場、介護現場は交代制勤務であり、夜勤を経験します。

若いうちはあまり深く考えない人もあるのかもしれません。

しかし、家庭を持つとか、年齢を重ねると一人だけのことでもなくなりますし、体力は無尽蔵ではなくなります。

自律神経も間に合わなそうです。

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毎日出勤時間が違う

フリーランスや自営業者も、時間の変化に晒されやすい職種ではないでしょうか。

週3日は朝9時出勤で、残りの二日は13:00からなどという方もあるでしょう。

或いは、毎日時間が違う人もいると思います。

ある日は、夕方から24:00まで働き終電で帰宅し、翌日は午前から仕事なので睡眠時間が削られます。

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通勤時間も無視できない

通勤時間も無視できない要因です。

また、その通勤環境ということもあるでしょう。

1時間座って居眠りでもできる電車と、1時間立ちっぱなしだったり、乗り換えが多かったり、寿司詰めで持ちこたえていくのとではだいぶ違います。

その分、家事が増えた

残業が減った分。家族団らんの時間が増えたらいい!と考えたくなるものですが、場合によっては、浮いた時間家事が待ち受けているということもあるでしょう。

これは、いろいろな見方ができます。

これまで40%の完成度だった家事を100%まで高めることになった、という場合です。

これは、残業時間が減っても家事労働がそれを埋めますので、どうなのでしょう。

自分がマシーン、ロボットのようになったと感じるとき

マシーンのように働くという表現はありますが、これが負担になる方も多いはずです。

これは、労働基準法の定める時間内ならば大丈夫ということなのでしょうか。

それにしても個人差があると思います。

また、120%頑張る人と、いつでも40%くらいの力の入れようの人とではかなり異なる結果を生むでしょう。

異動や昇進

これも、マシーン、ロボット化に少し重なる点もあるでしょう。

個人の意思など無視され、住む場所や仕事の内容が一方的に変更されるのですから。

あたかも、別なソフトをインストールされて動き出すパソコンのようです。

パソコンも、最近はいろいろ詰め込まれすぎてか、ずっとぷすんぷすん音を立てて何かやっています。

また、このほかにも不公平感、嫉妬など様々なことを秘めているように思います。

急激な信念の転換

これも時に経験することです。

アメリカの大統領が変わった時などの様子を思い出すと、想像していただけるのではないでしょうか。

いきなり、これまでのやり方が否定され別なやり方を強いられるような状況です。

江戸時代が終わっていきなり髪形を変えられるものでしょうか。

業務の詰めすぎ

往年のベテランといえども、不慣れな業務もあるものです。

また新人や若手に、とにかく若いからという理由で仕事が降ってくることもあるでしょうか。

仕事ではなくとも、地域行事や消防訓練などで若手が出ることもあります。

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逆にすることがない

詰めすぎも問題ですが、何もすることがないような環境もまた酷です。

非常に難しいものです。

かつて仕事をさせないなどという状況がありました。

これは現在パワハラにも挙げられることがあります。

大きな何かが終わった時

荷下ろしうつやなどという言い方があるように、たくさんあったものがなくなったときには、それまでの疲れが出るということもあるのでしょう、或いはもっと大きな局面では次の生き方が必要とされてくるタイミングにもなります。それらは、重役の任期を終えた後や、プロジェクトの後かもしれません。

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人間関係に巻き込まれる

退職理由の要因にもなる、人間関係は時に強大なストレスとなることがあります。

これは上司、部下、同僚、取引先など様々な人間関係で起きうるストレスです。

もちろん残業のコントロール制限は重要

うつの治療中で、通院しながら働いているような場合、まずはとにかくというぐらいに残業のコントロールは主治医と話し合われるべき重要な事柄です。

これは抜きにしてよい話ではないのです。

臨床心理士のカウンセリングでは、労働時間や残業制限などの意見を医師が出す診断書のように正式に挙げることができません。主治医とよく話し合うことが重要です。

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まとめ

労働時間以外の要因は多くありました。(もちろん、いまだ残業時間が以前長いままという環境も人知れずあるのでしょう。)

中でも、人間性を見失うような環境はやはりこたえるのではないでしょうか。

そして、複合的にということもあると思います。

1つであればやり切れる、やり過ごせることであっても、それらが幾重にもなったら、もう一体何が負担になっているのかさえわからなくなりそうなものです。そして、そもそもの働く喜びとはどこに見いだせるものなのでしょう。