最終更新日 2025年5月20日
カウンセラーが購読すべき雑誌とはなんでしょうか。 新聞をよく読みなさいとは、学生の頃によく言われた経験をお持ちの方も多いと思います。確かに新聞にはいろいろな情報が毎日満載です。経済のことや医療・福祉に関する記事まで幅広くあります。 毎日読んでいたら、
読まない人と比べやはりその情報量の蓄積は別な経過を辿るのではないでしょうか。知識があれば良いものでもないと思いますが、それでも、そのような機会は必要となることがあると思います。
カウンセラーはどのような雑誌・本を読むべきか
大きめの書店の専門書が扱われるコーナーに行けば、心理学関係の雑誌が定期的に発刊されていることに気づかされます。 それほどたくさんの種類があるわけではないので、書店においてある位ならば、仮に全部読んだとしても読み過ぎにはならないことでしょう。
問題は経済的な購読料をどこまで割くことができるかという方でしょうか。 月間少年誌のような価格では手に入りません。
自分で購入すること
購入するかしないか、選択に迷うことは多いと思います。購入できない分は、どこかの図書館で時間が経てば目にすることも可能だと思います。 しかしながら、自分のお金で購入するところに意味があるのかもしれません。
購読を続けることで、それはカウンセラーとしてのアイデンティティを保つことに寄与してくれるかもしれません。 逆に購入したことで満足してしまい、中身を熟読することをないがしろにしてしまう可能性もありそうですが・・・。
雑誌の価格
参考までに、雑誌類の定価を幾つか調べてみました。
- 臨床心理学(金剛出版):1980円(税込み)※以下全て税抜き
- 精神科治療学(聖和書店):3190円
- 精神療法(金剛出版):2420円
- こころのりんしょう à·la·carte (聖和書店):1760円 休刊中
- 家族療法研究(金剛出版):2200円
- 子供の心と学校臨床(遠見書房):1540円
自分のお金で購入することは大事だと思います。しかし、限度はありますので、うまく図書館や大学などの活用を組み合わせる方が現実的でしょう。
分野はなるべく広くかどうか
雑誌と一言で言っても、関係する分野を含めれば、相当数の雑誌が刊行されていることに気づかされます。(休刊となっている雑誌が多いという事実もあります)
カウンセリングに特化しか雑誌もあると思いますが、全体の中では、本当に少なものです。
カウンセリングと精神医学は異なりますが、近接領域ではありますから、やはりカウンセラーであっても、精神医学系の雑誌を購読する意義はあるでしょう。
その他、教育や福祉関係、就労関係など手を伸ばせば、もう読み切れない程です。
こう考えてゆくと、お馴染の雑誌と、それ以外の雑誌とでは、扱いを分けるくらいの力の配分は必要となるでしょう。
購読雑誌以外にも、組織に所属していれば色々な情報が舞い込んでくるものです。
全てを雑誌に寄る必要はないのです。というよりも、雑誌だけで完結しないことだらけと考えておくべきでしょう。
金剛出版の『臨床心理学』
さて、心理臨床家が読みたい雑誌の一つに、金剛出版の『臨床心理学』が挙げられると思います。(定価:1600円)
現在、この雑誌は奇数月の10日に出版されています。内容は非常に専門的ですから、このペースで発行することは、非常にエネルギーを割いているのではないでしょうか。 毎回、原著論文も掲載されており、多様なテーマが掲載されているという印象を受けます。
雑誌、臨床心理学の沿革
金剛出版のHPを参照すると、現在17巻まで発刊されています。 第1巻1号は、2000年12月に発売されており、日本の心理臨床に携わる著名な先生方の名前が筆者として連ねられています。
毎回、特集が組まれており、例えば1巻第3号は、初回面接と見立てが特集されています。 特集を見渡すと、テーマは多岐にわたっています。がん・スクールカウンセラー・学生相談・グループ・精神医学・倫理・アセスメントなど様々です。
バックナンバー
バックナンバーのダイジェストを見渡してみると、以下のように、やはり多様なテーマを掲載していることがわかります。執筆者も著名な先生方が並んでいます。
第1巻
- 第6号 緊急特集 子どもの虐待
- 第5号 特集 解釈の実際</li> <li>第4号 特集 家族の現在と家族療法
- 第3号 特集 初回面接と見立て
読み方
病院で活動している人は、スクールカウンセラーの特集を読むことが無意味かと言えば、決してそんなことはないでしょう。 これだけ多様な領域が扱われているのですから、他の領域のことを知る機会とすることがまずできると思います。
我々は教育者ではなく、心理臨床家です。教育現場に入る際に、教育の知識は必要になりますが、決して、その道の専門ではなく、あくまで心理的な視点から、教育現場で起きる様々なことを理解しようと試みるものです。
この態度は、医療現場にいても、福祉現場にいても同様の事が言えます。
つまり、自分が従事していない分野の内容を読むことは、特段専門外のことではないと思います。おそらく、他の分野で起きていることと同様の事が自分の従事する分野でも起きていることに気づかされるのではないでしょうか。
そして、自分自身の従事する現場での活動に示唆を与えてくれる可能性は十分にあると思います。
逆に、購読ということで書いておりますので、全部読むということになりますが、自分の興味のある領域だけをまずは読んで見るということでも、意義があると言えるでしょう。
片っ端から本を読むのも一つ
カウンセリングの本はどれを選んでよいかわからないという難しさがあります。
書店にはそれほど多くのカウンセリング関係の本が並んでいるものです。
伊東博先生の「カウンセリング」にも触れましたが、もし片っ端から読んでみようと思った際には、カウンセラーのための基本104冊という本が出版されています。
改定新版 カウンセラーのための基本104冊 創元社 2005
104冊という具体的な数字が挙げられていますが、これで十分かというと、やはりそうではないのでしょう。タイトルには「基本」という言葉が添えられています。
何冊読んだから良いというものでもないと思いますが、このように紹介された本であれば、片っ端から読んでみようという気持ちになるかもしれません。
中にはもう読んだことのある本も交じっているかもしれませんので、それで数冊は読んだことにしてスタートということでも良いのでしょう。
カウンセリングを学ぶ立場からすると、カウンセリングを学ぶとはどういうことなのか、という疑問が終始ついてまわると思います。
場合によっては糠に釘のような思いを続けいる人もいることでしょう。そんなときに、少なくとも基本的な104冊を読んで学んだことは確かである、という自分の中での確認になるという意味も含まれるように思います。
カウンセリング、心理療法、精神医学、臨床心理学などの分類を知って読む
カウンセリングを勉強したつもりが、実はそれは精神医学だったというようなことは起こりがちです。
この点については、臨床心理士と精神科医の違いの一つは視点にある?をご参照頂くとイメージが多少なりともつくと思います。
また、カウンセリングと一言で言っても、それが何を指しているかは文脈によって異なります。
カール・ロジャーズのカウンセリングそのものを指している場合もあれば、心理療法全般をカウンセリングと表現する傾向もあります。当ブログでも、カウンセリングの種類は200を越えるという話もあるほどのページで、幾つもの方法をまとめています。
- 関連ページ:カウンセリングにはたくさんの種類がある
カウンセラーは非常に独自のセンス・視点を持った存在だと思います。だからこそ、自分自身の専門性とはいかなるものなのかを明確にしておく必要があり、他の職種との違いを常に意識することで、その独自性の探求が進むのではないでしょうか。
自分自身の事を棚に上げるつもりはありませんが、カウンセラー自身が、カウンセリングだと思って行っている事でも、実は、精神医学よりの発想になっていることなどはよく起こりがちなのです。(医療行為を行っているという意味ではありません。
美しく並べる
余談になりますが、雑誌や本をどのように、置いたら良いでしょう。
中身の方が重要だと多くの人は考えると思いますし、実際にそうなのでしょう。
しかしながら、余りに雑然と並べるよりは、ラックなどを購入して、美しくしておくことも、購読を意味あるものとする一つの手ではないでしょうか。
冗談の様な話に聞こえると思いますが、こうしたことが、忙しさの中で、たくさんの情報の中に埋もれさせないコツになると思います。
もし、何かのダイレクトメールなどを放置して置いたら、たちまちに雑誌はそうした紙の中に隠れてゆくことでしょう。
無駄な物は買わない!と怒られそうではありますが、購読するのであれば、このくらいのことは許されるのではないでしょうか。
しかしかっこだけ・・・と言われて恥ずかしい思いをすることがあるのも事実です。
時間を置いて読み返すと別な感触が得られることがある
伊東博、友田不二男など、カウンセリングに関する書籍は多数あります。
このような本は、一度読んですべての内容が理解されるという性質のものではないと考えられますが、時間を置いて一度読んだ本を読み返してみると、以前とは違う印象を受ける場合があります。
このようなことを経験された方は、カウンセラーに限らず、多くの分野にいらっしゃるのではないでしょうか。
本そのものは大きく変化しません。無くしたりせず同じ本を読んでいるのならば、内容が変わってしまうことはありません。時に図書館で読んだ本を、時間を置いて別な図書館で読むと内容が異なっているという経験をすることがありますが、それは年月の流れによる本の改定などが事情になります。
ここで言っているのは、本の側の変化ではなく、読み手側の変化ということになります。
本を読む側は、様々な体験を経た後に、もう一度その本を手に取ってみると、いかに自分の理解が浅はかであったことかを思い知らされることもあります。
理屈と実践は異なる
本を読んで、カウンセリングの理論などを理解したつもりになるものです。
例えば、共感や受容とはどういうことなのか、こういうことがカウンセリングの本には記されています。
しかし、ロジャーズが言わんとしたその実際に迫ることは、容易でないことを誰しも知っています。
現場に出ては、自分の無力さや至らなさを痛感するものであります。
そして、コツコツと実践を続ける中で、改めて、本を読み返してみると、以前とは別な感触を覚えることがあります。
以前は読みこなせなかった部分がすらすら読めると感じることもあれば、逆に、一行一行の重みに気づき、なかなか読み進められなくなってしまうこともあります。
そして、時に、あの感覚が共感ということだったのか・・・などと、実践した中で体験した感覚と合致する体験が起こることもあります。
だいたいの物事はまず実践がある
カウンセリングを学ぶ場合には、どうしても理屈からはじまりがちですが、スポーツや武道を学ぶような場合には、理屈の説明は、本当に後回しです。
走り込んでみたり、ボールを投げ合ったりすることが先で、理論的な学習は、3年後くらいになることもあると思います。
確かに、ボールの投げ方を本を読んで理解するより、先輩の投げる様子を見たり、直接教えてもらう方が、上達は早いでしょう。
カウンセリングはスポーツと同じように考えられるものではありませんが、ロールプレイなりなんなりを体験することの方が重要なのかもしれません。
まとめ
先日見たドラマの中で、阿部寛さん演じる男性が、先生は●●の本で書かれている〇〇についてどのような考えをお持ちですか?人間心理の深いところを描いていますね・・・などというような質問を投げかけるシーンがありました。(カウンセラーに対してではありませんでしたが)
多くの専門家がたじろぐことでしょう。
人間心理を表現している本は専門書ばかりではありませんし、むしろドラマや文学の方にこそ学ぶところが多いことも事実です。
あらためて心理学やカウンセリングを学びたいという場合には、何を学びたいのかを再考すると実は違う事を学んだ方が有益であると気づくかもしれません。
- 関連ページ:実は看護師もカウンセリングを学んでいることがある