カウンセリングには理論がないかというと決してそうではなく、臨床心理学という背景があります。また、臨床心理学は学問として、日々研究を重ね、科学的に根拠を固めてきたことも少なくありません。
フロイトやユング、ロジャーズなどの名前は多くの人に知られるところとなりました。
また、もう少し裾野を広げれば、例えば発達心理学という分野もあり、人間の心理的発達を科学しているのです。臨床心理士資格を得るためには、こうした理論的なトレーニングも受けるカリキュラムがあります。
カウンセリングでは個別性に注目する必要性がある
では、こうした理論に基づく心理援助活動だけを行えばよいのかと言えば、決してそういうものでもないのです。時に、理論が全く役に立たないこともあるでしょう。これは、カウンセリングの世界に限らず、医師や看護師も経験するところだと思います。
理論も必要
ですが、理論を持たないこともまたそれは何を行っているのだろうという疑問へ繋がります。科学性というところをしっかり押さえることがまずは大事なことであることには違いありません。
そして、カウンセリングでは、同様に、個別性ということが重要になります。理論通りのことが生じることはまずないと言って良いでしょう。一人一人が全く別な人間なのですから、そう考える方が自然でしょう。
このようなことは、科学の知、臨床の知というテーマで多くの議論がなされてきています。カウンセリングを行う場合このような視点を持つことは重要です。
人間は非常に多様な存在
カウンセリングは、様々な方面へ多様な可能性を持った展開を示すものです。そのときカウンセラー側が理論のことばかり考え、ましてや理論へ当てはめようなどと考えていては、進む話もどこか現実味の伴わないことになるでしょう。時には、美談としてしまうこともあるでしょうか。
また、理論の他にも、世間の語りということも、難しい問題です。世間は就職や勤労、結婚ということを推奨、というよりは当然のことと考える節がありますが、そうした世間の語りばかりをベースに考えていると、その人の進みたい方向を見失ってしまうことにもつながりかねないのではないでしょうか。
どこに人生の価値を置くかはその人が決めて良いものであるはずなのに、世間的なプレッシャーが強い場合、そうした個別的な価値観を大事にできない場合があります。カウンセリングでは、こうした個別の世界観を尊重しようとする時間とも言えるのではないでしょうか。
万人に共通の方法がなくなるフェーズがある
これは別な記事でも触れていますが、例えば〇〇する方法について、一般的な方法が示されるものです。
ストレス対処なら、入浴、音楽、運動などという具合にです、
しかし、入浴さえすればよいかといえば、決してそんなことはありません。
場合によっては、逆に入浴が負荷になる時期さえあるものです。
そこで、個別性が重要になるのです。
そもそも、ストレスとなるかならないかも異なることがあります。
関連ページ:ストレスとなる事やその受け止め方は人によってそれぞれ違う
風呂さえ入れないとき、どのようにするのが良いのか。これにも科学的なエビデンスを出そうとする人たちもあることでしょう。
それはさておき、<こんなときはどうしてきたのですか?>などと我々は尋ねてみるものです。
「ひたすら寝ることにしてます」とおっしゃるかもしれません。
また別な人では、「夜風にあたるのがいいんです」と答えるかもしれません。
これは全く違うやり方であり、個々人で異なるところなのです。
そのままそれを採用することもできれば、そのエッセンスを深堀することも場合によっては可能となるでしょう。
夜風に当たると、どんな体験をすることになるのか、これは丁寧に伺っていかなければなかなか共有できることではありません。
カウンセリングがじっくり時間をかけて行う意味の一つがここにあることに気づいてもらえるでしょうか。
因みにこの展開の仕方は、ソリューション・フォーカスト・アプローチを思わせます。
進展の仕方もそれぞれになる
このようなことを積み重ねていくうちになんらかの変化が生じる展開があります。
その変化の仕方はまさに個別的なのです。
同じように社会復帰するという風にあらわすにしても、様々な経路での復帰がありますし、その形も思いもそれぞれなのです。
その人の人生の背景、体調、価値観など様々なことも関係する中での、その人にとっての形をつくっていくことになります。
関連ページ:その人らしく生きて行く個性化
まとめ
カウンセリングでははっきりしたことを何も言わない、インチキだ!と怒りたくなる方もあるかもしれません。
上記のような背景があってのことかもしれません。
いわゆる、一般社会の中で行われてきた相談モデルと異なるという点が、こうした不信を生むこともあるのでしょう。
我々は、とにかく日々精進して専門性を高める以外にはないのだと思っています。
